未来軍部11
□なあ、アル。
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「ぼくは、にいさんに…わらって、ほしいよ」
「オレはおまえと笑いたいって言っただろ!!」
「だって…なみだが――」
はらはらと落ちる涙に、そっと手を伸ばす。
「だったら、おまえがオレの涙を止めろ!ちゃんと、全部怪我を治して!!」
アルフォンスはうすく微笑む。
「エイジ…しょう、さ。お願い、します…。僕は、兄さんの笑顔を、見たい、から。最後まであがきたい…」
「わかりました!准将、今は離れてください!」
エドワードは、目の涙を拭って、頷いた。
「エイジ、まかせた。おい、無能!一緒に来いや!!」
ロイは、溜息をついて、
「どこのチンピラかね」
とあきれていた。
☆
ダン!と勢いよく扉をひらいたエドワードに、
「レディの部屋にはもう少し静かに入室したまえ」
というロイの言葉を無視して、エドワードはその部屋の主、ボイル少将につめよった。
「てめぇがオレのアルを殺そうとしやがったな!」
ボイルはにこり、と笑った。
「ロイ・マスタング次期大総統?なぜ、貴方がこの猿同然の人間と、そして兄に従うだけしか能のない犬を近くに呼ぼうとしているのか、わかりませんわ」
「てめエみたいな臆病モンに言われたくねーがな」
「それに、貴方なら理解してるでしょ?中央、いえ全国にいる私の支持者の数を。私を失脚させるということは、自分自身の失脚と同然」
マスタングは、目を大仰に見開いて見せた。
「君は、何かカンチガイしていないか?」
「なんですって」
「君は、民主主義の移行すら恐れているのだろう?戦争がなくなる事を恐れているのに、なぜ、『支持者』などという言葉を使っているのか、私には理解できない。まだ、『軍事政権』だ」
「つまり、大総統の好きにしていいんだよな」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、命令しろよ」
「私は、レディに手を上げることはしたくない。もちろん、鋼のの手を汚すつもりもない」
「散々汚されてるんだけどな」
エドワードは、に、と口角を吊り上げた。
ふと、窓のブラインドの隙間から、外を覗くと、軍人が多数集まっているのがわかった。
「アンタが支持者と呼ぶ人間が、ワラワラと集まってるみたいだな」
「私が開発した、砲弾よ」
よくみると、大砲のようなものがいくつも並べられている。
外に見惚れていた隙に、ざっと風のように現れた下仕官たちに、エドワードとロイは包囲されてしまった。二人は溜息をついて、しぶしぶ両手をあげたが、ロイだけは「次期大総統、こちらへ」と誘導された。
「おいおい」
敵はオレ一人ということかよ。
「というわけだ。鋼の、頑張りたまえ」
「てめーっ覚えてろよ!リザさんにチクってやるぜ!」
ロイは涼しい顔で外へ出ると、その後にボイルが続いた。
「次期大総統は、救出したわ。暴漢を早く、捕まえて」
近くの部下にそう伝えるボイルに、ロイは溜めていた息を吐き捨てた。
ボイルが外へ出て、砲弾の近くに寄る。エドワードは拘束されて、他の下仕官たちは、逃げるように外へ飛び出した。
「おいおい、司令部ごとぶっ飛ばすつもりかよ」
砲弾は、完全にこの部屋を射程に捉えている。
両手を後ろで縛られ、足も縛られた状態で床に転がされているエドワード。
「オレは芋虫じゃねーっつーの」
そういいつつ、エドワードは起き上がって、デスクにあったペンを後ろ手のまま持ち、錬成陣を書き始めた。
一方、砲弾の近くでは。
「さっさと撃ちなさい!」
そうボイルが叫んだ。
「しかし、司令部ごと吹っ飛ばしても大丈夫なんでしょうか!?」
「構わないわ。また、建て直せばいいんだから」