未来軍部11
□この想いに名前をつけるなら
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この想いに名前をつけるなら――
「はっ」
自分の考えに思わず冷めた笑いが零れた。
紫煙が昇る、曇天を眺める。
その名前がわからないから、わかるまでそこに居てやる。
たとえ、相手が誰を想うのかを知っていても、自分はここに居るしかない。
自分にもし、他に繋がる相手がいたとしても、おそらく自分はアイツの為に死ぬんじゃないだろうか。その時、初めてアイツがオレの存在に気がつこうと――
「あいつは、泣くかな」
願わくば、泣くなと言いたい。
そういったら、
『泣くわけねーだろ』
って、突っぱねるに決まっている。だけど、その瞳に何かが輝いているのをオレは見て死ねたら……――ああ、それが本望なのか。
人は欲深いな。
ふう、と溜息と共に白煙を吐き捨てる。
そして、咥えたタバコの先が、一瞬にして消えた。
「うおっ!」
パシ、と銃弾が床にめり込むのを見て、思わず伏せた。
恐る恐る、顔をあげて狙撃ポイントを確認。すると、きらり、と光ったビルの屋上。おそらくスコープを、反射させたのだろう。
「ガネット?」
その横に手を振る小さい軍服の人間。そして、なびかせている金の髪。
「あいつ…!」
同時に、両手を叩いて、そのビルの壁に手をかざす。
『サボルな!!』
というビル壁で凹凸を作って書いた文字。
「げっ」
なにやってんだ、あいつらは!
仕事か?
いやいや、このままだとあの場所から、屋根を伝って走ってきそうだ。さっさとズラかるしかねぇ。
慌てて階下へ降りる階段へ向った。
「…ったくよ」
にや、と笑っている自分自身に気がつく。
かなわねぇ…。
たとえ、この想いに名前がなくとも。
j.e