未来軍部11
□この想いに名前をつけるなら
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もし、この想いに名前をつけるなら――
そんなことは無意味だと知りながらも、ときどき思う。
窓に腰を預け、ブランデーを傾けると、その視線の先には、「愛」を教えてくれた人がいて、その小さな囲いの中で、彼は笑っている。
貴方に問うのは間違っている。
ここにはいない。
それは、ただの写真という無機物。
・・・だから、
問うのかもしれない。
貴方がいたら、オレは問うことなど知らないから。
そう、
答えは常に、自分が持っている。
……
「馬鹿げている」
グラスの中で氷が鳴る。
自分の空っぽな心と同じ音をたてて。
突如、鳴る、電話の呼び出し音。
「はい」
『オレだ。今すぐ来い』
「オレは現在休暇中ですが」
『おまえにしかできないことだ』
思わずついた溜息に、電話の相手は
『ひとりで時化たツラしてる場合じゃねーぜ』
思わず、眉間に皺が寄る。これが、電話でよかったのかもしれない。
「…仕方ないですね。でも、駄賃はいただきます」
『キス以外な!』
そういって、がちゃん、と受話器を置かれ、思わず、くく、と笑いが零れた。
おそらく、相手は真っ赤だろうから。
「キス以外ですよ。そうですね、貴方自身を」
だから、「コレ」はなんという名前の想いなのか。
わからないまま、自分は再び蒼いジャケットを羽織る。
それしか、できないのかも――しれない。
「笑わないで下さい」
弱い、自分を。
フォトフレームを、静かに伏せた。
s.m