未来軍部11

□お薬飲めたね☆
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 これは、ただの熱だけじゃない。確かに発熱はしているし、風邪の症状もでているが、この苦しみ方は尋常じゃない。

 途端、バン!と弾かれるように執務室の扉が開いた。
「准将!この薬飲んだんですか!!!」
 エイジだ。
 茶色い瓶と同時に、エドワード用のオレンジ味嚥下剤(ゼリー状オブラード)を持っている。
 うっすらと目をあけて、エドワードは小さくこく、と頷く。
「これは、山岳訓練に行く前に、クスリの売買をしていたバーにあったもので、ラベルがなかったので、成分を調べるためにおいてあったんです!すぐに山岳訓練だったので、それが終了次第、調べようと…!」
「毒薬とかじゃないよね!?兄さん、飲んでからどれくらいの時間がたってる!?」
 そう聞かれても、今が何時か確認できないし、と頭で考えていると、やはり胸がずきずきと痛む。
「苦しいの!?」
 エイジが、慌ててエドワードの近くに寄り、聴診器を取り出す。
 アルフォンスが、兄の胸をはだけようと、手をかけると…

「え」
「へっ!?」

 一瞬、二人は目の前のものを凝視してしまった。
 いや、何が起こったかは、わからない。

 だけど。
「あの…少佐」
「はい…」
「見間違いでしょうか…。兄の胸、大きくないですか」
「…僕の目にもそう見えますが」
 一瞬の間の次に、
「「えええええ!?」」
 二人は、大きく叫んだ。
「っ、アル…!」
 きゅっと眉根を寄せたエドワードに、アルフォンスはなんだか違う、と思った。
 いや、元から目は大きいが、その目の鋭さがやや柔らかく感じる。睫もいつもより、長く感じるし、唇はぷっくりとふくらんでいるような?いや、いつもそうだけど、なんだか、全体に丸いカンジが…。
「まさか」
 上半身にはかなりの異常が。
ということは、大事な下半身は!?
 アルフォンスが、ボトムに手をかけたところで、ゲシっと蹴られて、我に帰った。
「何すんだ!バカアル!エイジいるのに!」
 確かに声も、通常でも成人男性にしては、高い声だ。
だけど、違う。
 声が、甲高い。
「とりあえず、准将は平気そうだし、ちょっと熱もありそうなんですけど、僕、早急にこの薬の成分を分析してきます!聴診器、使ってください!」
 アルフォンスに聴診器をわたして、エイジは薬を持って出て行った。

「だって、気になるじゃない!?胸が膨らんでるし、兄さんの声も高いし!大事なもの、なかったらどうすんの!?」
 顔面蒼白のエドワードは、「ど、どうしよう…」と呟くが、しばし考えてソファに再び横になった。
「兄さん!?」
 顔をすべて隠してしまって、アルフォンスからは見えない。
「兄さん…」
「出てけ」
「え、ちょっと、どうして!?」
「いーから出ていけ!!」
「でも、どんな薬かわからないし、異変あると怖いし!!心配だよ!」
「イヤなんだよ!おまえに、会いたくない!!」
 そう言い放たれて、アルフォンスは、一瞬、返す言葉が出なかった。だが、ぎゅっと拳を握って、小さく呟く、
「どうして…」
「……」
「どんなことも、一緒に乗り越えてきたじゃない…?」
「それとこれとは別だ!」
「どうしてさ!!」
 兄の身体を力いっぱい抱き起こして、顔を上げさせた。
 だが、視線をそらされる。
「やめろ」
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