未来軍部11

□サイミン・サムライ☆
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「アクトン大尉」
「はい」
「休憩時間は、あと五分だ。早く食べて執務室に戻るぞ」
「は、はいっ」
 まだ座って五分もたたないうちにそういわれて、アクトンは焦って食べ始める。
 だが、本人は慌てる様子もなく、食べていて、やがて五分が経ったあと、まだ半分は残っているトレイをもって立ち上がった。
「戻るぞ」
「はいっ」
 慌てて立ち上がったアクトン。
「あれ、准将。今日は、食欲がないんですか?たまの食事なんですから、ゆっくりしたらどうですか?」
 ガネットが通りかかり、そういう。
 周りの仕官たちは、それまえに黒髪とかツッコミはなしですか、と思ったがガネットは、「また何か考えての行動だろう」とあえて何も言わないようだ。よくできた部下、といえば聞こえがいいが。
「そういうわけにはいかん、ヒトナナマルマルまでに書類を完了させねばならいからな」
 そういうと、トレイを片付けてさっさと執務室へ戻ろうとする。
「…?」
 ガネットも首をかしげた。

 執務室へもどろうとする途中で、ベレッタに出会い、
「あ、准将。今日のおやつ、ソニック准将の旦那様作のシフォンケーキですよ。楽しみにしててくださいね。って、髪、黒っ!?なんですか!?おまじないとか!?」
「金では、目立ちすぎるからな。黒にしてみた。それと、ベレッタ少尉。日々おやつのことしか考えないのか?一日の女性平均カロリーを超えてしまうぞ。気をつけたまえ」
 そういうと、さっさと執務室へ入ってしまった。
「へっ…?今、何か言われた…」
 呆気にとられたベレッタだった。


 そして、数時間、司令官執務室から音もなく、ひたすらペンを動かしている司令官。あまりにも司令官の声や姿が見られないので、ときどき用事もないが、そっと扉を開く部下たち。
今も扉を、そっと開いて、大部屋に集まった面々で、ひそひそと話をしていた。
「ってか、真面目すぎませんか!?」
 ベレッタの言葉に、アルフォンスは、
「一時的な催眠術なんで」
 と苦笑する。
「あれだけ真面目すぎると、あとで反動があるとか」
 エイジやエネルも加わっている。
「ってか、サムライだぜ。髪も、オールバックで一つに結んでるし」
「なんで黒なのかしら」
 ソニックも呆れ顔だ。
「外見が一番違和感あるのに、それ以前に真面目な行動のほうが違和感あるって…ある意味すごいですよね、准将」
 エイジの言葉に、一同も頷く。
「あと、二時間ほどで定時ですし、定時で監査終了なんで、まあ、いいんじゃないですかね」
 マーカーがそういうと、一同は、そっと扉を閉めた。

 やがて、定時がくると――
 エドワードのペンがぴたり、と止まった。
「完了」
「お疲れ様です。准将」
 アルフォンスがそういうと、監査書類を確認し終わったアクトンが立ち上がった。
「破天荒な方だとお聞きしておりました。非常に真面目で、すばらしい司令官ですね。実は、監査部公安委員には、エルリック准将に似ている方がいらっしゃいます。階級は中将なのですが、お会いされたら、気が合うのでは、と思います。余談失礼しました」
 かつん、と軍靴を慣らして、アクトンが敬礼すると、アルフォンスは聞いたことないなぁ、と思いつつ敬礼を返した。
「では、エルリック准将。今日は、ありがとうございました!」
「ああ。またいつでも来ていいぞ」
「はっ」
 エドワードも、敬礼をするとアクトンは書類を持って執務室を退室していった。
 
「ご苦労さま」
 アルフォンスがそういうと、エドワードは「苦労なぞしてない」といいつつ、再び書類を見始めた。
 さすがに苦笑したアルフォンスは、明日髪を切るという宣言までしている兄の、催眠術をどうにかしなければ、と思う。
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