未来軍部11

□サイミン・サムライ☆
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 そして、兄の耳元にぼそぼそ、と言葉をかけると、兄は、す、と目を閉じると同時にデスクに突っ伏した。そして、アルフォンスがぱちん、と指先を鳴らと、はっと顔をあげた。
「うおっ!?なんだ、この疲労感!」
「ご苦労様。兄さん」
「へっ?」
「今日は、もう帰れるよ。一緒に帰ろうか」
「へっ!?」
 エドワードが、周りをきょろきょろすると、書類のタワーがない。
「あれ…?」
「その疲労感は、達成感です。今日みたいな、真面目兄さんもステキです」
「…?」
 なんだか、身に覚えがないのに褒められて、意味が分からないエドワードだったが、首を傾げつつもがりがりと頭を掻く。
「って…へっ!?髪黒いんだけど!?インクかぶった!?」
「いや、そうじゃないんだけど。もうひとりの兄さんが、金は目立つとかいって…」
「もうひとりの兄さん!?何の話しだ!?」
「いえいえ、なんでもないです。さ、かえろう。今日の夕飯は何にしようね」
 意味がまったくわからないし、今日一日何をしていたか思い出せない。だけど、アルフォンスの機嫌がすこぶるいい。
 なので。
「うまいものがいい」
 そんな兄の返答に、くす、と笑って。
「うまいものにしようか」
「うん」
 にこ、と笑った兄とともに、アルフォンスは大部屋へ出た。
 瞬間。
「よお、サムライ。今日は早く帰れるんだって?」
 にしし、と笑っているエネル。
「真面目な准将のほうが、人気上昇するかもしれませんよ。中央で」
 とエイジ。
「でも、おやつ食べ損なってますよ?もちろん、私が頂きましたが」
 とベレッタ。
「昼食も五分ほどでおわってらっしゃいましたし、お腹すかれたのでは?」
 とガネット。
「でも、今日のエルリック准将…」
 ソニックがそういいかけると、誰ともなく「ぷっ!」と噴出した。
「あはははは!思い出すだけで、笑える!」
「書類がなくなって、楽ですが」
 マーカーもくす、と笑っている。
「なんで、オレ笑われてるんだっ!?今日の監査どうなったんだ!?」
「滞りなく済んだから、気にしなくていいよ。さ、帰ろう」
 腑に落ちないような表情のエドワードの手をぐいぐいひっぱって、アルフォンスは爽やかな笑み。
「じゃあ、また明日。お疲れ様でした〜」
 ぱたん、と閉められたドアを見ながら一同は。
「これって、俺ら的にはどうなんだろ…書類あったほうが、ラブラブを見ないで済むんだけど…」
 エネルがそういうと、エイジは
「だったら、中佐に、准将が大尉を好きになる催眠術をかけてもらえばいいんじゃないですか」
「おまえは、遠まわしに、オレに死ねと言ってるのか!?」
「そう捉えられたら、そうなんでしょうね」
「医者のくせにー!!」
 べ、とエイジ舌を出して笑った。


一方、二人は――

 すでに暗くなった道を二人で歩いている。ふと、兄が遅れぎみになったので、アルフォンスが振り向くと、エドワードが前かがみになって倒れこむ瞬間だった。
「兄さん!?」
 慌てたアルフォンスは、兄を支える。
「兄さん!どうしたの!?しっかりして!!」
 体を揺すってもだらり、と力をぬいて自分に倒れかかってくる。
「兄さん!にいさ――」
 そこで、アルフォンスははっとした。
「……寝てる」
 そう、エドワードは、この寒い中歩きながらも眠ってしまったのだ。
「どういうこと…」
 アルフォンスは、兄を背負って、考えた。
 そして、もしかして、と一つの仮定が導かれた。
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