未来軍部11
□月の天使
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「じゃあ、同じくらい濃厚なやつ、させてやるよ」
アルフォンスの両頬を両手で挟みこんで、エドワードからアルフォンスに唇を軽く重ねる。
「いっぱい、いっぱいしてよね!?あんなキス、忘れるくらい、いっぱいキスしてよね!?」
「はいはい」
ちゅ、ちゅ、と軽いエドワードからのキス。
「そんなんじゃない!も〜っと濃厚なヤツ!」
「ああもう!わかったって!」
エドワードがアルフォンスの唇に、自分の舌を侵入させた。たどたどしい動きだったので、アルフォンスは「ああ、兄さんだ」と思いその舌を受け入れる。思わず、頭の隅でマーカーとのキスと比べてしまったことに、さらに凹んでしまった。
「あんな、慣れたキスじゃ、絶対ダメだ」
「…?何が?」
微かに目元に朱の入った兄の顎を、今度は自分があげさせて、噛み付くようにキスを繰り返す。
「っ、ん…。はっ…」
角度をかえて、何度も何度も。
舌で口腔内を侵すように、何度も何度も。
何度も、何度も、痺れるようなキス。
「―ぃいかげんに――しろ!」
あまりにもしつこい口づけに、エドワードは息を調えながら、頭に拳骨を落とした。
「だって!足りない!足りないもん!!」
「ああもう、わかったって!!」
二人の口づけは、空が白んできたころには、すでに激しい動きに耐える息をするだけになって、
違うところで、重なり、
そして、
「んっ――あああん!」
ちゅ、と兄の先っぽを吸い、さらに舌でつつくと、白い糸を引く。
「はぁ…は…だって、おまえ、何回飲んだ…?」
「だって、消毒だもん」
「その口で、キスするなよ」
「ええー!するよ、もちろん!消毒だもん!!」
実は、こうして身体を重ねるのは久しぶりのことだった。
兄が、『黒い何か』に襲われてから、なんとなく手を出せずにいた。だけど、兄は何も言わずに、自分を受け入れてくれた。
すこしは、おちついてきたのかもしれない。
あえて言わないのは、兄が自分を心配しているから。そして、それを聞かないのも、兄に弟がまだ心配している、と思われたくないから。
さきほど、大笑いしてくれたのは、実は自分的には、ほっとしていた。
笑えるようになったのだ。
「暖かい」
「え?」
何を言ったのかわからなかったが、兄がふふ、と笑った。
兄が笑うなら、それでいいか。
再び、兄の唇に自分のそれをかさねて――
ゴツ、と脳天に拳が落ちてきた。
「オレの飲んだ口で、こゆいキスすんなーっ!!」
と真っ赤になって叫ばれた。
「大丈夫だよ。僕も兄さんも、消毒完了だもの」
一瞬何を言われたのか、わからなかったが、理解できるとなんだか、恥ずかしくなってきた。
「…うん。そうかも」
ぎゅ、と自分からアルフォンスに抱きつくと、彼もぎゅっと強く抱きしめてくれた。
「「あ」」
二人顔を見合わせた。
「また、立ってますが、アルフォンスJr.君が」
「えへ。だって、兄さんは変わらず可愛くて、きれいで、まるで天使のようにやわらか」
「ドコのことを言ってるのか、わかんねーけどな!!」
真っ赤になった兄に、アルフォンスはふふ、と笑った。