未来軍部11

□アゾート
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「つーことで、作戦会議だぜ」
 場所は、資料室だった。薄暗く黴臭さがあるこの場所で、小さなダンボールを囲って、エドワードとエイジ、エネルアルフォンスが座り、書架にもたれかかっているのは、マーカーだ。そして、小さな窓の傍にガネット、扉側にベレッタが立っていた。
「という理由で、さっさとトッ捕まえなきゃいけねぇ。マーカーとエネルは、情報屋をフルに使え。金はオレが用意する。ベレッタ少尉とマーカーで、うまく軍内の情報を掴んでくれ」
「はい」
 ベレッタが了解をすると立ち上がり、マーカーも踵を返す。
「エイジ、エネル。とりあえず、情報待ちだが次の爆破場所などの予告が入ったら、ただちに動けるようにしておいてくれ。仲間の解放が目的なら、どこか人の集まる場所を制圧する可能性もある」
「わかりました」
 一度、解散しようと立ち上がったとき、窓の外を監視していたガネットが、「准将」と呼ぶ。
「どうした」
「エマリー中将の部下三名が来たようです」
「部下?」
「彼に副官はいません。信頼しているものが三人」
「誰だ?」
「それが、すべて非公開となっておりまして」
 ガネットがそういうと、アルフォンスも頷く。
「ただ、お互いを呼ぶときは、黒髪で前髪がまっすぐな女性がメイニイ、栗色の巻き髪の女性がメイユイ、金髪で短い髪の女性がメイリンと呼ぶようですね」
 アルフォンスが付け足すようにそういうと、エドワードも窓を覗き込む。
「…ふうん。レヴィ大佐みたいだな」
 確かに、軍服は改造されていて、白の軍服に金の縁がつけられている。そしてボトムは、ミニスカートか、ショートパンツのような姿だった。
「彼女たち三人が通ったところでは全員が平伏す、なんて噂まであります」
「どういう意味で平伏すんだ?」
「美貌か、身体か、あるいは、強さか…」
「謎がまだまだあるみたいだな、アメストリス軍ってば」
 エドワードは、がりがりと頭をかいた。
「さて、大部屋へもどるか。執務室取られちゃったし」
 そういうと、エドワードは、踵を返して、その部屋をアルフォンスと共に出て行った。

「実際、兄さんはどう思ってるの?エマリー中将のこと」
「ん〜別に?オレの気に入らないことするなら、反発するだけ。誰が正しいかなんて、わからないけど、十年前のことを今更蒸し返してきたのは、気に入らない」
「とりあえず、ソニック准将は、ココに留まってるんだよね?」
「中将の監視の下、な」
「…マスタング大将は、どう考えているんだろう」
「高みの見物だろ。エマリー中将のこと、気に入ってるみたいだぜ」
 アルフォンスは、溜息をついた。
「彼の“気に入る”は、ときに趣味が悪いよ。兄さん含め」
「なんだとーっ!」
 くるり、と振り向いて睨みあげる兄に、アルフォンスは、ふふ、と笑みを浮かべた。
「しばらく、オアズケになりそうだね」
 そういうと、さらりと唇をかすめた、アルフォンスの唇。
「アル!」
 猫の如く毛を逆立てた兄に、アルフォンスは、再び笑いながら先に廊下を歩いていった。
「ったく…」

 エドワードが、大部屋に入ると、自分のデスクに三人の女性が座っていた。
「あら、ちっこいのが来たわ」
「かわいい!」
「ふふ、食べちゃいたいくらいね」
 三人の白い軍服を着た女性たちに、囲まれて、エドワードはむす、と顔をゆがめた。
「誰がちっこいだ!余計なお世話だ!エマリー中将だって、かわんねーしっ!」
 そう叫んだ瞬間、司令官執務室からエマリーが扉を開く。
「私は、貴様より10センチは高いがな」
 そういうと、かつかつと軍靴を鳴らして、歩いて行く。
「遊んでいる暇はないぞ。メイニイ、メイユイ、メイリン」
「アイサー」
 四人が出て行くと、エドワードは「9センチ9ミリだい!!」と叫んでいたが、本当かどうかは定かではない。…と、そこにいたベレッタは思った。
 が、すぐにベレッタも腰を上げる。エドワードと視線だけを交わして、ベレッタはその部屋を出て行ったのだった。
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