未来軍部11

□アゾート
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 部屋に一人になると、エドワードは資料を読み始めた。それは、ソニックが担当した10年前のテロの内容だ。
「イリアステル。そんな名前をつけるくらいだ、錬金術師に決まっている」
 だが、そんな記述は何一つない。
 首謀者の名前は、アゾート。
 当時の犯行声明が載っていた。それは、全部で三枚。読み進めていくと、ただの犯行声明だが、エドワードはとある言葉と、言い回しが気になる。三枚ともそれは、使われているのだ。
 まてよ…これは、犯行声明だけじゃない。
 ぞく、とエドワードの背筋に悪寒が走った。
「暗号だ…」
 そして、それをよみ解くと、『第五研究所』『囚人』『赤い石』…
 エドワードは、バン、とデスクを叩いた。
「だから、“アゾート”!」
「どうしたの」
 アルフォンスが入室するなり、兄の様子がおかしいので尋ねてみると、エドワードはぎりりと唇を噛み締めた。
「犯人を捕らえられなかったのは、ソニック准将のミスかもしれないが、こいつらは、当時、第五研究所のことを暴露している!知っていた人間、つまり、軍内部だった男…!」
「え!?だったら、なぜテロなんて起こしたの!?」
「当時のテロの場所を見ろ。少しずつ、第五研究所に近づいている。後すこし、というとこで、軍の作戦で止められた。そして、軍内にいたから、その男は逃げ延びれた」
「ソニック准将は、もしかして、犯人に気がついた…?」
「でも、ソニック准将が、軍内にいたからという理由で、逃がすわけがない。自分の身近な人間だった。だから、作戦が筒抜けだった。…たとえば、指揮を命じた上官、とか」
「当時の上官は、アンセル・アボット。ソニック准将の責任を取るために、退役している」
「なるほどな。その後、アボットの行方は」
「不明だね」
「だったら、なぜ十年後にまた、このようなことをしたのか――」
「そうだよね。軍が変わろうとしているこの時期になぜ、テロを起こしたのか。そして、なぜ仲間を出したいと思ったのか…」
 二人が黙り込んだそのとき、がちゃり、と扉が開かれた。
「准将。東方囚人収容所が、攻撃されました」
「「!」」
 マーカーの言葉に、二人は顔をあげた。
「エイジとエネルを呼べ。ベレッタ少尉の情報を把握した上で、マーカーも来い。オレとアルは先に収容所へ行く」
「了解」
 エドワードとアルフォンスはすぐに、走り出した。


「囚人たちの捕縛をアルフォンス隊、マクベス隊、ミラード隊中心に、10小隊でこなせ!オレとアルで爆破された建物の修繕を行う!そして――」
 エドワードが到着するなり、そう指示をしているところへ、エマリーが現れて、
「貴様はすべて十人以下で行うと申したであろう?」
「それとこれとは別だ!囚人を野放しにはしていられない!」
「私に任せればいいのだ。貴様は、さっさと司令部に戻れ」
 その言葉に、エドワードはきり、とエマリーを睨みつけた。
「オレの部下だ!昨日今日来たようなヤツに、たとえ階級が上であろうと、命令されたくねぇな!」
「コドモっぽい独占欲だ」
「そりゃそうだろ!」
 そう言い放ったエドワードだったが、エマリーは、踵を返し、東方司令部のメンバーの前に立ち、自分の作戦を命令する。
だが…
「少将の言うことは聞けぬ、と申すのか、貴様ら!」
 誰一人、動こうとしない。いや、迷いが出ているようにも見えた。
「すんません、エマリー中将」
 一人の仕官が呟く。
「オレたち、自分の納得する命令じゃないと、動けないんッス」
 巨体の人間が、そう頭を掻きながら言う。なんという、似合わない動作だろう、と思ったがエマリーは、鋭い視線で男を睨み上げた。
「時間がないのだぞ!貴様ら!」
「おい、みんな!この際どっちの命令でもいいけどよ、囚人は捕縛してくれねーと後々困るんだよね。時間がない。おまえらで、おまえらの意思行動してくれや!」
 エドワードがそういうと、一斉に軍隊が動き出した。エドワードは、それを見届ける前に、爆破された壁などの修繕にとりかかる。

 その時、
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