未来軍部11

□アゾート
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「エネルの情報屋からの話ですが――」
マーカーの報告に、す、とエドワードは視線を動かした。
「おう」
「イシュバールキャンプに、怪しい男がいるという情報が入りました」
「…レヴィ大佐と連絡は?」
「まだですが、そちらに向うなら、連絡を取りますが」
「いや、いいだろう。コレが終わり次第、オレとアルで向う。おまえも来い」
「ですが、エマリー中将もそのネタを掴んでいるようです」
「わかった」
 そういうと、エドワードとアルフォンスは、修繕に力を注ぐ。
終了と共にマーカーの運転する車で二人は、イシュバールキャンプへと向ったのだった。


 イシュバールキャンプ地から、数キロ離れた砂漠で、三人を迎えたのは、レヴィ大佐ではなく、
「…!」
 ソニックの長女、リディア・ソニックだった。
 敬礼をすると、エドワードは目をぱちくりさせる。
「どういうことだ…!?」
「母のセシル・ソニックがご迷惑お掛けしております。レヴィ大佐のお力をお借りし、臨時にこちらに配属させていただきました」
 東方司令部にいたはずだが、まだ書類はできていないのだろう。アルフォンスもエドワードも知らない事実だった。
「中央でテロが行われたとき、母はテロリストの名をしり、これを探していました」
 リディアが渡したものは、日記帳だった。軍のものではなく、個人の日記。そして、それは、十年前のものだった。
『アンセル・アボット少将の命令で、自分が指揮を任された。全ては、少将が退役したとき分かった。彼は、犯人を逃がすつもりで、自分に指揮を任したのだ。作戦を知るアボット本人が逃げるために。彼が起こしたテロは、許されるものではない。だが、その理由は本当に、犯行声明にあっただけの内容なのだろうか。退役した日の彼の目は、まだ大きな何かを隠しているようにも見えた』
 日記の一ページをエドワードに読ませる。そして、もう一枚めくるように言われて、エドワードがページをめくった。
『見えない研究は、アゾートの鞘にすぎん。そう言った彼の言葉の意味がわかれば、全てを理解できるのかもしれない』
 エドワードが顔をあげると、その日記帳をアルフォンスに渡す。
「見えない研究と、アゾートとは、一体なんでしょうか…」
 リディアが呟くと、エドワードは
「見えない研究は、今は根絶している。アゾートとは、『賢者の石』を入れておいたといわれる剣のことだ」
 きゅ、とアルフォンスの眉間に皺がよった。
「イシュバールキャンプにアンセル・アボットがいるということです。キャンプの一番東にある、この場所です」
 リディアの言葉にエドワードが頷こうとした瞬間、
「エドワードさまぁあああ!」
「うっわー!久しぶりな悪寒!!」
 背後から飛びつかれて、エドワードは「ぐえ!」とカエルを踏み潰したような声をあげた。
「レヴィ大佐!!」
 アルフォンスが慌てて引き剥がすが、ソレはなかなか離れない。
「ちょ、ぐるじい!!」
 そこで、身体は離されたが、エドワードの右腕にぎゅっとしがみついている。
「お久しぶりですわ!エドワードさまっ!ぜんぜん会いに来てくださらないんですもの〜レヴィ、寂しかったんだから!」
「それより、大佐。アンセル・アボットってやつ、知ってるか?」
「もう、すぐに仕事なんですもの〜。その男、知ってますわ。私が、匿ってますもの」
「「えっ!?」」
 さらりと、とんでもない事を言われて、エドワードとアルフォンス、そしてマーカーまでもが目を見開き、次の言葉を忘れた。
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