未来軍部11

□アゾート
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「ネズミ一匹殺しても、何も変わらぬのだよ。軍という世界は、何も変わらず回るだけだ」
「オレには、アンタの考えていることがわからない。現在、ブラッドレイは消えた。新たな大総統は、国を変える」
「だから、貴様は若いというのだよ。本当に、大総統が変わったところで、国は変わるのだろうか」
「そう考えて、何も行動しないやつより、マシだ。他人の命をムダにして、自分を守ってるアンタが、ブラッドレイを非難できるはずがない。方法は、いつの時代もテロじゃない」
「はは…。話し合いをしろと?それを受け入れろといいたいのか、若僧が!」
「ばっかじゃねーの。話し合いは、受け入れるだけじゃねえ。気にいらねーなら、気にいらねーやつをぶん殴ればいいだけの話だ!そんで殴られて、お互いの考えを知る!」
 そういった瞬間、エドワードの視線は、マーカーの立つバラックの入り口に向けられた。そして、いきなり入り口の玄関扉的な役割をしていた布に向かって、とび蹴りをした。
同時に、す、と閃光が走って、その布はス、と切られた。
 と、同時に、三人の白い改造軍服を着た女が入り込み、エドワードと黒髪の男――エマリー二人が対峙していた。
「貴様は、殴らず蹴っているではないか」
「オレ、足長いから」
「手より数ミリな」
「んだと、このやろー!!」
 再び殴りにかかるエドワードに、エマリーはサーベルで応戦する。
「くっ」
 エドワードが両手を叩いて、地面に手をつき、槍を錬成した。それを振り回すが、サーベルの攻撃をどうにかかわしているだけで、攻撃ができていない。
 す、とエマリーのサーベルがエドワードの頬を切り裂いた。

「准将!」
 アルフォンスが呼ぶと、エドワードはそちらをむく。白い軍服を着た二人が、アボットを連れていこうとしている。
 アルフォンスは、一人の白い軍服の女と対峙しており、リディアがアボットの手を掴んでいた。
「まだ、話は終わっていません!アボットさん!母を、セシル・ソニックを貴方は陥れたんだ!助けたふりをして、今、母は軍法会議にかけられる!」
 そこで、アボットは、目を見開いてリディアを見た。
「ソニックの娘か…」
「母は、貴方を信頼していた!貴方が責任をとって、退役したとき、落ち込んでいた。それなのに、結果貴方は自分を守っただけだ!」
「自分を守る理由も、必要もわからぬ若僧が…!」
 アボットが吐き捨てるようにそういった。
「だけど、あんたはそれを後悔してる!」
 エドワードにそういわれて、アボットはびくり、と身体を振るわせた。
「ソニック准将は、テロ首謀者を逃がした10年間の責任を取らせられようとしている。もうすぐ、軍法会議所に送られる。ソニック准将に、悪いと思うのなら、オレたちと来い」
 エドワードが、アボットに近づこうと足を進めた。
エマリーが、エドワードの背後から手を回し、サーベルを首元に近づけ、エドワードの歩みを止める。
「その手には乗らせないぞ。メイユイ、メイリンつれていけ」
「いくわよ、おじいちゃん」
「ほら、さっさと来る」
 二人がそういうと、アボットは地に膝をつけ、ぎりぎりと拳を握った。

「私は…優秀な部下を、囚人にしてしまうのか…!?」
「させねーよ。アンタの罪は、アンタだけのもんだ」
 エドワードが、エマリーのサーベルを素手で退かす。手の平が線のように切れ、血が溢れる。だが、それに構うことなく、地に膝をつけたアボットの前に、手を差し出した。
「アンタの罪はアンタだけのもんだ。ソニック准将に罪はない。そうだろ?」
「ああ!私の、優秀な部下に罪はない…!」
 その言葉に、エドワードはにやり、と笑った。その笑みのまま、振り向いて、エマリーを見る。
「アル、録音したか」
「はい」
 アルフォンスはにっこり、と笑ってポケットから、録音できる機械を取り出した。
「マーカー。時間は」
「15:08」
「よし。アボットさん。あんたの罪、余生でちゃんと償えよ。オレの大事な仲間、助けてくれて、サンキュ」
 エドワードは、にやり、と笑った。
 その笑みに、エマリーは不機嫌に眉根を寄せる。
「証拠録ったからな。これ、オレたちが開発した、高性能録音機。ベンリだろ?」
 エドワードがそういうと、すたすたとそのバラックを後にする。アルフォンスは慌ててその後をついていった。
 その二人の背中を見て、エマリーはサーベルを鞘に収める。
「久しぶりね。ユエファー」
「アレクシア。アレが、おまえの好きな人間なのか?相変わらず趣味が悪いぞ」
「失礼ね。でも、いい男なの」
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