未来軍部11

□sense of family
2ページ/10ページ

 アリッサの言葉の、ひとつの単語にエドワードがはっとする。
「赤い、光?」
「ええ。赤かったって」
「…」
 カップに手を置いたまま、エドワードが動かなくなったので、アリッサたち三人が首をかしげる。
「どうしたの?エド兄ちゃん」
「エドさん?」
「ああ、気にするな。集中してるだけだから」
「そう?」

 赤い光、と聞いて思い出すのは、赤い石くらいなもんだ。だが、本当にそれかどうかも怪しい。
 アルフォンスに連絡を取っておくか、それとも…。
 いや、まず、調査が先だな。


「おい、エド」
 客室の扉をノックされて、エドワードは、はっと目を開いた。
朝だ。
カーテンの隙間から、光が漏れている。
 だが、金縛りのように、自分の体がひどく重いことに気がつく。
「入るぞ」
 扉が開かれたと同時に、エドワードは体を起こした。
パジャマ代わりのタンクトップに、金のまばゆい髪が垂れ下がっている。髪をかきあげて、エネルを見た。
 エネルは、エドワードの右肩の大きな傷痕と、左肩の滑らかな肌。そして、細い首筋に、どきり、と胸が高鳴ってしまった。
 見慣れたと思っていたのに、朝の光に、透き通った肌が、一段とまぶしく感じたのだろう。

「はよ、エネル」
 声がかすれて出ていない。
「あれ?」
 自分でも予想外だったようで、喉を押さえた。
「エド、風邪ひいたのか?」
 そうきかれて、関節の痛みや、体の重さの理由がわかったような気がした。
「風呂上がりに、遅くまで調べていたのが、いけなかったかな」
 はは、と笑ったエドワードだ。エネルが、客室の隅に置いてある、デスクの上にある、地元の歴史やなどが書かれた本。
 めくられたページのまま、開かれ、さらにメモ書きが何枚もあった。
「ったく」
 エネルが、エドワードの額を押して、再びベッドに横たわらせた。
「アルがいないんだ。自分の体調は自分で管理しろよな」
「うっせーな、つい夢中になっちまっただけだ」
 むす、と口をとがらせる。
「今日の調査は、とりあえずオレだけで行く。看病は、母ちゃんに任せるしかないな」
「オレも行くぞ。これくらいの、熱、全然平気だ」
 そう言っているのに、エネルは無視して、そのまま部屋を出ていく。そして、代わりに現れたのは、エネルの母親だった。
「エドさん!今日は、お仕事ナシだからね!」
 エネルから事情を聞いたのだろう。そういわれて、エドワードはしぶしぶ「ふぁい…」と布団に顔を隠しながら返事をした。
 朝食も、病人食が出てきて、食欲はなかったが、食べないのもまた悪いと思い、エドワードはそれに手をつけた。
「あったけぇ…。母さんの、味がする」
 思わず漏れた言葉に、エネルの母親がにっこり、と笑った。
「美味しいかい?食べて、元気になんな」
「エネルは?」
「仕事に行ったさ。アリッサもついてったけど」
「大丈夫なのか?アリッサまで」
「平気さ。エドさんは、ゆっくり休んでな。遠慮なく、母さんだと思ってなんでも言いな?」
「サンキュ…」
「エドさんの、母さんとは似ても似つかないだろうけどね」
「…母さんは、エネルのかあちゃんと同じくらい優しかったよ。でも無理して、病気に倒れた。無力だった、自分が悔しかったから、エネルの母ちゃんは、絶対無理して、倒れてくれるなよな」
 そんなエドワードの言葉に、エネルの母親はにっこり、と笑った。
「エネルにも言われてるよ。大丈夫さ。私は丈夫だよ。エドさんの母さんは、さぞ綺麗な人だったんだろうね」
「……あんなオヤジが惚れるくらいだからな」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ