未来軍部11
□sense of family
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「素敵じゃねーって!アリッサおまえ、オトコ見る目を養え!」
「ええ〜素敵よ〜」
「はは、光栄だなぁ」
ぽりぽり、とホーエンハイムが笑うと、エドワードはますます機嫌が悪くなる。
「あ〜〜〜!!熱が上がる!」
再び、布団をかぶろうとした瞬間、
「エド、これを見ろ」
エネルが、アリッサに持たせた赤い石を掲げた。
「――!これは…!?」
「あの、洞窟にいくつか落ちていた。そして、男に襲われた」
エネルに持たせたまま、エドワードがじっと見つめる。もし、賢者の石のまがい物だったら、おかしな反応があるといけない、ということを、警戒しているのだ。
だが、ホーエンハイムが、それをひょい、と手にした。
「なっ!てめー!!」
「大丈夫だ、エドワード。これは、賢者の石でもなんでもない」
「え…?」
「宝石だろう」
「宝石…」
エドワードがそっとそれに手を伸ばし、手のひらに乗せる。
「ホントだ…。あ」
エドワードは、ふと昨日呼んでいた本の内容を思い出した。ベッドから降りて、机に置いてあった本のページをめくる。
「これだ」
エドワードが指差したところを、エネルが読むと、そこには昔、宝石が採れたことが書いてある。
「ずいぶん昔のことだが、まだ少し残っているのかもしれない」
「ああ。で、エドのオヤジさんは、なんでここに?」
「宝石が採れることは、なんとなく知っていたんだ。その見つかったという遺跡と錬金術師が気になったものでな」
「ってか、おまえ、今、なにやってんだ?」
「旅を、している。その次いでに、錬金術師に会ったりもしているな」
「旅?」
エドワードは、すっと目を細めた。
「ああ…」
視線を落とした父親の目に、赤い宝石が光った。エドワードも、同じ場所に視線を向けた。
「爆発を起こした、錬金術師の名前は、このまえ、何回目かの国家錬金術師資格試験に落ちた。ほしがっているのさ、賢者の石を」
父親がつぶやく。
「だが、作り方は知らない。それが救いだな」
エドワードが、自分の髪を整えつつ、ひとくくりにした。
「エネル。このあたりの基地に連絡して、その錬金術師の足取りを捕まえろ」
エネルは、「アイサー」とゆるい敬礼をして、踵を返した。
同時に、アリッサも兄を追いかけて、部屋を出ていく。
「あんちゃん、私も手伝いたい」
「ばかやろ!」
そんな会話をしつつ。
「あんたはどーすんだ」
「私からの情報など、おまえはいらないだろう?」
「ああ、いらねーな」
ホーエンハイムは、口角を釣り上げて、メガネの奥でも目を細めてほほ笑んでいる。
「老い先短いあんたも、自分のために生きてもいいんじゃねえの」
エドワードが、ホーエンハイムに背中を見せながら、青いジャケットを羽織った。
「自分の為に生きているさ…。おまえも、今、そうなのか」
「ああ」
ぴ、と指先で襟を直し、振り向く。
「ま、短いといっても、どれくらい生きるのか、検討はつかぬがな」
はは、とホーエンハイムが笑いながら、その部屋を出ていくために、扉を開いた。
「母さんの墓参りくらい、しろよ」
「おまえもな」
そういうと、ホーエンハイムは背中で手を振って出て行ってしまった。
「……」
扉が閉まった音が響く。
「休暇がとれたらな」
エネルの実家に来てから、母親が恋しくなったなんて、どこのガキだ。
エドワードは、苦笑しつつ軍服へ着替えを済ませたのだった。
着替えを済ませて、階下へ降りて行くと、「大丈夫?エド兄ちゃん」とアドレーとシンディの瞳がこちらを向いてた。
「ああ、大丈夫だ」
そう返事をすると、エネルの母親と自分の父親が紅茶を囲いながら話をしているではないか。