未来軍部11

□sense of family
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「って、まだいたのかよ!!」
「エドさん、大丈夫かい?起き上がって」
「ああ、これくらいの熱は平気だ。ってか、オヤジだよ!」
「いや、母さんの焼いたスコーンも最高だったが、エネルさんのスコーンも最高だよ」
 ははは、とのんきに笑っている。
「ああそうかい」
 どうでもいいや、とエドワードはそのまま歩きだした。
「どこへ行くんだい?」
「調査」
「でも、熱があるのに…」
「慣れっこだって」
 電話を終えたエネルが、エドワードと合流し、家を出て行った。
「無茶する息子さんだこと」
「いやぁ、お恥ずかしい」


「チャリ希望」
 まだ赤い顔をしているエドワードが、手を挙げてそういう理由を、エネルはわかっていたので、倉庫から、自転車を出してきた。
「整備してあるってことは、だれか使ってるなぁ」
 ぶつぶついいながら、エネルがサドルにまたがり、ハンドルにランタンを二つぶら下げた。エドワードは後ろのタイヤの出っ張った部分に足を乗せる。
「おっし、エネル号、行け!」
「あいさー」
「あー!あたしもつれてって!あんちゃん!」
「ダメだ!来るな!」
「あんちゃん、私も行くからね!?」
 背中で、アリッサが叫んでいたが、エネルは聞こえぬふりをして、自転車は出発した。
 エネルの運転で、自転車は、小さな丘を登る。
「遅いですが、エネル大尉」
「文句言うなっつーの」
「にゃはは。しかし、アリッサは、怖いもの知らずだな」
「まったくだぜ!」
 肩に置かれたエドワードの手の平から、じんじんとぬくもりが伝わってくるが、熱の所為なのか、自分がただ意識しているだけなのか。
 かすかな息遣いも近くで聞こえる。
「仕事じゃなかったらなぁ〜」
 思わず、自分の希望が心から漏れてしまい、エネルは苦笑した。
「なんか言ったか?」
「いいえなんでもナイデス」
 丘を下り、森の手前の洞窟で、エネルは自転車を止めた。
「ここか」
「ああ」
 自転車を降りるなり、ランタンに火を灯し、二人は洞窟を直進していく。
 二人、並んで歩けるので同時に進んでいくと、エドワードが小さな石につまずいて、体をよろけさせた。
「エド!」
 危ない、と思った瞬間エネルがそれを支えた瞬間、小さくカチ、という音が聞こえた。

 瞬時に、二人は、ぞくり、と背筋が凍る。
「――っ!」
 とっさに、エドワードが両手をたたいた。

 ドオオォ――ン!

 アリッサが洞窟についた瞬間、洞窟から、爆発音とともに、勢いよく煙が噴き出して、茫然と立ちすくんだ。
「あ、あんちゃん!!エドワードさんっ!!」
 ただ、もうもうと出てくる煙に、なすすべもなく、腰が抜けたように地に尻もちをついた。
「あんちゃん…」

「げほ!げほ!!」
 むせながらも、一人洞窟から出てきた。いや、背中に一人背負い、歩いてくる。
「あんちゃん!!」
「おーアリッサ。来るなといったのに」
 真黒な煤で全身が汚れている。
「大丈夫!?」
「ああ」
 そう言っているが、足から出血していた。
「足から血が!エドワードさんは!?」
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