未来軍部11

□金無垢の終末(後篇)
2ページ/8ページ

「てめぇ!」
「右肩と左足を負傷した時点で、雪山に放置した。錬成の影響で、雪崩がおこる寸前だった。一人背負って降りるのは、無理があったので、エドワード・エルリックを置いて下山した。以上」
「ふざけんな!」
 エネルがエマリ―の胸倉をつかんだ。
「貴様、無礼にもほどがある」
「エネル大尉!」
 エイジが声を荒げると、エネルはその手を下す。
「だが、オレはゆるさねぇ!」
「貴様なぞに許されなくともよい」
 そういうと、エマリ―はそのまま部屋を出て行った。

「大将!なんで、あんなやつを向かわせたんです!そもそも、どうしてエドワードが盗みなんて…!」
「『あの研究』は、奴らにとって、ある意味永遠の課題となる研究だ」
 ロイが、立ちあがって、窓の外をのぞく。鳥が一羽、羽ばたき、それを追うようにもう一羽羽ばたいていった。
「どういうことですか」
「合成獣にされた少女との出会いがあった。その出会いは、今でも彼らの疵となり、胸の奥にあるのだろう。それは、私の所為でもあるが、彼らには、その出会いは必要であり、そして、『後片付け』も必要だった」
 ロイが話す言葉を、三人は黙って聞いていた。
「そして、人型の合成獣と向き合うことも必要だと思い、調査させた。その実験体は死んでしまったが、それだけで済ませては、あの合成獣が生きた証が得られないだろう?実験を別の研究員に続けさせたのだが、それをあいつらは、許せなかったのだろう」
「どうして、人型合成獣の研究が必要なのか、正直僕も理解できません」
 エイジの言葉に、エネルもうなずいた。
「私も遊びでさせているわけではない。莫大な予算が費やされているものだ。今後、さまざまな分野で、合成獣の研究、調査は必要だ。人間の生体錬成や治癒方面でもヒントが得られるのは十分に期待できる。ただ、『合成獣を造るな』と抑え込んでは、さらに、悪化してしまうものなのだよ、人間というものは」
「確かに、動物の生態を知ることは重要で、人体に応用できることもあると思います。医学の発展にもつながる。だけど、なぜ、埋葬したエデンを掘り起こし、切り刻んで解剖しなければいけなかったんですか!」
「それは、感情だ、エイジ少佐」
「わかっています!」
「おそらく…エドワードだけではなく、今回はアルフォンスが一番、疵が大きかったのであろう」
「…どういうことです」
「兄に似たキメラの死。たとえ、兄ではないにしろ、掘り起こし、解剖されたということは…あいつらがした行為(罪)に似ている」
「…」
「研究を盗んだのは、おそらくエドワードではなく、アルフォンス」
 その言葉に、三人は目を見開いた。
「まさか…」
「真実は、君たちの目で見たまえ。北方へ向かい、二人を連れ戻してくることを、命ずる」
「逮捕、ではいんですよね」
「君たちを公安にしたつもりはない」
「その公安が邪魔したら、何をしてもいいんだろうな」
「殺すな。それだけだ」
「「「了解」」」
 三人は、かつん、と軍靴を鳴らして、敬礼をした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ