未来軍部11

□金無垢の終末(後篇)
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「弟が国外に逃げて、オレも途中まで一緒にいて、オレに何の被害もないと思ってたのか」
「貴方には、次期大総統が味方についている」
「おまえもだろ」
「え…でも、マスタング大将は、キメラ錬成を推奨してるんだよ!?僕は、正直同じ考えではない。医者として、キメラに関することを、錬丹術では、どういうことをしているか、とか、キメラを離して元に戻せるのか、とか、そういうことを学びたかった」
「学んでも、もう死んだエデンは元に戻らない。それは、人体錬成だ。だけど、彼が生きた証とか、生まれた意味、それを生かせないのなら、エデンは本当に死んだことになるだろ」
「っ…」
「それでも、おまえが、シンに行くのなら、止めない。オレを殺していけ」
 エドワードは、ベッドに座ったままアルフォンスの右手をつかみ、自分の首へ持って行った。
「おまえの、踏み台くらいになら、なってやるさ」
 す、と目を閉じたエドワード。

 アルフォンスの右手がエドワードの首に触れたまま、がたがたと震えだした。
 一秒が、ひどく、ひどく長く感じた。


「何、おまえら。そんなプレイ始めちゃったの」
 ふいに第三者の声が聞こえて、二人は扉のほうへ顔を向けた。
「エネル…大尉」
「エネル…」
 エネルは、相変わらずたばこを噛み、いつもは着ていない寒冷地仕様のコートを羽織っていた。
「大総統の命により、おまえらを連行する。そんでもって、邪魔する公安は、殺さなければ排除してもよいことになって、る!」
 しゃべりながらも、エネルが廊下側にいた人間に蹴りを入れた。が、まんまとかわされ、とたん、バタバタと三人の白いコートを着た女が入ってきた。
「まだ生きてるのね!本当にしつこいんだから!しつこい男は、嫌われるわよ、エドワード・エルリック!」
 エドワードの足を撃ったメイリンが銃をエドワードに向けた。メイニイは、エネルに銃を向け、メイユイは廊下側に銃を向け居ている。
「怪我人のいる部屋でドンパチやるつもりですか」
マーカーが、眼前にメイユイが銃を構えているのにもかかわらず、つかつかとその部屋に入ってきた。
「私、このたばこ臭いオトコでいいわ」
「私は、この黒髪のカモシカっぽいヤツ」
「残りは――」
「もちろん、オレだろ。オレの足、撃った張本人に、カリは返す主義なんだよね。たとえ女であろーと」
 エドワードが立ち上がろうとする前に、アルフォンスが立ち上がった。
「兄さんは生ぬるいから、僕が」
「おい」
「置いてった僕が言うセリフじゃないけど。兄さんの綺麗な足に、銃創を増やしたヤツ、許せません」
 怒りが目にともったアルフォンス。その瞳を見て、エドワードは、小さくため息をついた。
「おい、おまえら。オレの弟、無茶するんだぜ」
「兄さんの弟だもん」
 アルフォンスの両手が鳴った。

 だぁああん!

 一瞬にして、小屋が吹き飛び、ベッドの上から一歩も出ていないエドワードだったが、アルフォンスと対峙しているメイリン、エネルと対峙しているメイニイ、マーカーと対峙しているメイユイの六人は、雪の地に足を置いている。
「つーか、北方司令部の持ちモン壊すんじゃねーよ」

「何事ですかっ!」
 あわててやってきたのは、ハーバーだった。
「ああ…基地が…」
「心配すんなって、最後に直しておくから」
 ハーバーが青ざめていた横で、エイジがエドワードに向かって真剣な顔を向けてくる。
「エイジもいたのか」
「いましたよ!中佐を前科者にするなんて、兄としてどういう躾をしてるんです!」
「なんでオレが怒られてる!?」
「だって、もう少しで、中佐と会えなくなるところだったんですよ!?」
「もういいよ、エイジ」
「なんでですか」
「お灸据えといた」
「え…?」
「逃げるなら、オレを殺していけと言っておいた。首に手をかけさせた」
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