未来軍部11

□月に誘われて
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「一応、話は聞いておいて」
 ガネットに短く命令しておいて、エドワードは、「やれやれ」と首を回す。
 アルフォンスは、あわててエドワードの近くにより、両手をたたいて腰のあたりで丸めている、引きちぎられた布を元の衣装に戻した。
「二人っきりなら、アレでもよかったけど。ドレスもベールも似合ってるよ」
 くすくすと笑われて、エドワードは今更、赤面しはじめた。
「うっさい!それで、この宗教の隠している財産やら、武器やら出てきたのか」
「まだ報告はないけど」
 そういった矢先、エイジがこちらにかけてきた。
「この祭壇の下、もしかして空洞があるかもしれません。空気の流れと、錬成痕らしきものが」
「どこだ?オレも行く」
 エイジに案内されると、祭壇の端の石垣に、視線を落とす。
「錬成痕だな」
 エドワードがつぶやくと同時に、両手を叩いた。
「おっ」
 祭壇から、下へ階段のようなものがある。
「おい、だれか明かりをくれ!」
 エドワードが祭壇の上部から叫ぶと、エネルと数人が明かりを持ってやってきた。
「いるか、ランタン」
「おう、さんきゅ」
 エネルからそれを受け取り、エドワードがその階段に一歩進んだ。そのあとに、アルフォンスとエイジも続き、「大尉もですよ」と行くつもりはなかったのに、エイジに引っ張られてエネルも行くこととなってしまった。

 しばらく無言であるいていたエドワードだったが、ぴたり、と足を止めた。
「いままでに行方不明になった、信者の女性は何人だ?」
「ここ数年で、6名ですね」
「祭壇とかいいつつ、ただの遺体隠し場所じゃねぇかよ」
 そうつぶやくエドワードが突き出したランタンに照らされたもの――すでに白骨化しているもの――に、アルフォンスとエイジ、そしてエネルは眉間に皺を寄せた。
「テロ組織とつながり、信者を増やして、何を目指してたんだ、こいつらは…!」
 怒りの炎がふつふつとわき出ていた。
「こんな原始的な、宗教が存在するだけでも、理解できないんですが、信者は何を共感して、この宗教を信じていたんでしょうかね」
 エイジの言葉に、エドワードは
「こんなもん、ただの催眠だ。自分を神と名乗るやつほど、金を欲しがる。そして、その次は女。入信しないと、不幸が起きるとかいって、テロ組織と関係を結んでいたんだろうよ」
 ぼそぼそと口元だけで言うエドワード。同時に踵を返す。
「遺体を運び出して、検死。そして――」
 そういったとき、上の方から銃声が聞こえた。
「なんだ?」
 一発、二発ではない。
 銃撃戦に近い音がする。
 はっとした四人は、あわてて上に駆け上がった。

 ひょこ、と顔を出した瞬間、アルフォンスに下から引っ張られて、どうにか避けられたが、弾が横行している。
 エドワードが両手を叩いて、敷石から壁を作りだす。
「どうした!?」
 近くにいた士官に尋ねると、
「信者が反乱を!テロ組織の一派が参戦しております!」
 ぎり、とエドワードは唇をかみしめた。
 ここで、撃つなと命令したら、軍の被害者は増えるだろう。かといって、信者は民間人だ。ただ、宗教を信じていただけ。
「っ!」
 一瞬の迷いをだしたエドワードに、アルフォンスはその肩をたたく。
「迷ってる暇はないよ!貴方の部下を信じるしかない」
 そういうと、アルフォンスは、
「指揮は僕が!エイジ隊も参戦してください。ガネット隊、アルフォンス隊、こっちに来て!投光器設置!」
 アルフォンスは、祭壇から飛び出し、ガネット隊とアルフォンス隊と合流していく。

「准将、こちらへ」
 マーカーに呼ばれて、エドワードも祭壇を降りようとしたが、ふと立ちあがって思った。
 そして、脳裏に浮かんだ作戦は、ほんの数秒で組み立てられた。
 それを伝える必要がある。
 だが、作戦会議を行う時間などない。
「准将!」
 危ない、という意味をこめてマーカーが叫ぶ。
「聞け!」
 エドワードの声に、一同は銃を撃つ手を止めないまま、耳だけはエドワードのほうにむけられていた。
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