未来軍部11

□銘と命
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「ほら、どろどろ出てくるよ」
 太ももに感じた温かい体液に、エドワードは恥ずかしくて、アルフォンスの胸に顔を隠した。
「おまえ、あとで覚えてろよ…」
「いつでも、覚えてるよ」
 機嫌のいいまま、アルフォンスは兄を抱きとめた。



 風呂からあがっても、ぐったりとしていた兄をベッドの上まで運び、水を飲ませてやる。
「んぐ」
 にたにたといつまでもアルフォンスの機嫌がいいので、エドワードが睨みつけると、やっぱり笑顔のままアルフォンスが答える。
「兄さんの嚥下する喉、セクシーだよね」
「同意を求めてんか」
「ううん。断定」
 ふふ、と笑ってアルフォンスは、兄の髪を乾かし始めた。

「ああ、それでさ」
 思い出したように、アルフォンスが書類を渡す。
「これら項目について、具体的に提案しろってことだったよ」
 会議の書類らしい。
 エドワードは、むす、と唇を尖らせて、
「おまえは、こういう宿題があることを知っていて、ヒドイことしたのか」
「え、全然酷くないよ。優しく愛し合っただけでしょ」
 ばし、と書類でアルフォンスの頭を叩いておいた。
 すぐに、エドワードが視線をその書類たちに落とし、ふいに左手をあげた。まるで、何かを欲しいと言っているかのように。
 アルフォンスは、それを何か理解して、兄愛用のペンを渡す。それを無意識に受け取って、はっとした。
「あれ、オレ、今ペンって言った?」
「言ってないけど?」
「……どこの、奥さんだ、おまえは」
「兄さんのことなんて、すぐにわかるよ」
 ふふ、と笑われて、エドワードは真っ赤になったが、
「オレ、集中するからな」
 と照れ隠しに、そういい放ち、宣言通り、その書類に集中し始めたのだった。

 ☆
「お疲れさま」
 兄が集中している間に、アルフォンスが向かったのは、エイジがいる研究所だった。
「お疲れ様です。どうしたんですか、こんな時間に」
 研究員の服装を着ているが、髪の色も変え、さらにメガネを着用しているエイジは、とある研究室の扉が開くのを、隠れつつも見つめていた。
「はい、差し入れ」
 コーヒーとサンドイッチを渡すと、エイジはありがたく受け取り、「准将は?」を訪ねた。
「今、集中してるから、しばらく動かないと思って。どう?様子は」
「接触する様子はないですね」
 テロ組織と内通しているのでは、と思われている、研究所所属の大尉と、中央司令部所属の准将、二人の接触を待っているのだが、なかなか二人が会おうとしない。
「このテロ対策会議が行われている期間には、動かないと思うんですけど」
 エイジの言葉に、アルフォンスも内心はそう思っているが、エドワードの命令だ。聞かないわけにはいかない。
 ガチャ、と見つめていた扉が開かれた。
 二人が瞬時に隠れると、中から白衣を着た女性が現れた。
「彼女が、アメリ・ピット大尉です」
 まっすぐで綺麗な黒髪を、一つに結んでいる。
「尾行します」
 エイジがそういうと、アルフォンスは小さくうなずいた。


 エドワードは、はっと顔をあげた。
「アル?」
 誰もいる気配がしない。
「どこ行ったんだ、あいつ…」
 そういいつつ、書類をまとめて、サイドボードに置く。
「腹減ったあぁ…」
 ぐ〜ぎゅるるる、と腹が鳴ってローテーブルにおいてあったフルーツに手を出そうとした瞬間、アルフォンスが帰宅してきた。
「アル〜腹減ったぁ」
「あ、終わったの?ごめん、サンドイッチならあるよ」
 そういいつつ、てきぱきと用意してくれて、エドワードはそれをほおばる。
 アルフォンスも一緒にそれを手にしつつ、エイジの話をした。
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