未来軍部11

□銘と命
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「アメリ・ピット大尉を、今尾行しているよ。ロットン准将と会うのかどうかは分からないけど。でも、兄さんは、この会議期間中に動くと思ってるんでしょ?」
「動くな。だって、各地の司令官が集まって、テロ対策の話をしてるんだぜ?盗聴器とか、そういった類を忍ばせてるに決ってる。二人が会うという根拠は、恋人同士だから」
「えっ?」
「気がつかなかったのか?」
「え、そういうこと疎い兄さんにしては、敏感だね」
「だって、おそろいのペンダントしてたもん」
「二人を見たの?」
「うん」
「それだけで、恋人と見るのは、どうかわからないけど…。まあ、親しい間柄だろうね。で、盗聴器の隠し場所の見当はついたのかな」
「エネルがやってる」
 そう返事をした瞬間に、ノックされて、アルフォンスは扉を開いた。

 黒づくめの男がそこに立っていて、男は、口元を覆っていたマスクを取る。
「どうぞ」
 エネルだ。
「おう、ご苦労さん」
 エネルが部屋に入ると、やれやれ、と疲れたようにタバコに火をつけた。

「どうだった?
「部屋に、三か所だな」
 エネルが部屋の見取り図に、三か所赤い丸をつけていた。
 エドワードは、にやり、と笑った。
「ロットン准将は、会議には出ていない。ピット大尉が出られるはずもない。なのに、内容を知っていて、手薄な場所を攻撃したら、それは、筒抜け。内通者がいると、会議に出ているものを疑う。そこで」
「鋼の錬金術師殿が疑われるってことか?」
 エネルがふう、と白煙を吐く。
「なんか、そういう道筋を作るのが目的のヤツもいるだろうな」
「だから、兄さんに重要ポストを与えた?」
「それじゃあ、下に居る奴らが、黙っちゃいないな。テロの仲間に命令されていた、なんて思ったら」
「動くのは、今日じゃないな。オレ、今日の会議出ていない。それに、この『宿題』を提案してからじゃないと、疑えない」
 エドワードの言葉に、アルフォンスもうなずいた。
 同時に、電話が鳴った。
「はい」
『エイジです。今日の接触はありませんでした。彼女は自宅にいます』
「ありがとう。今日は、おそらく動かないだろうから、戻ってきていいよ」
『了解しました』
 受話器をおくと、エドワードは「エイジか?」と尋ねた。
「うん。ピット大尉は自宅に帰ったそうだよ。だから、少佐に戻ってくるように伝えた」
「そうだな。今日は、こないだろうな。マーカーの報告があったら、戻ってくるように言って」
「うん」
「そうそう、マーカーだけどよ」
 エネルが、ぼそ、とつぶやく。
「ロットンと知り合いみたいだぞ」
 その言葉に、エドワードとアルフォンスは、わずかに眉間に皺が寄った。
「知り合いなのか、仲間なのかはわからん」
 エネルが、さらっと重要なことを言い放つ。
「全然違うだろ、知り合いと仲間じゃ」
 エドワードがそういうと、エネルは紫煙をくゆらせながら、エドワードを見た。
「あいつは、そもそも東方に上の命令で乗り込んだヤツだぜ?それまえなんて、酷いもんだ」
「じゃあ、エネル。おまえの意見を聞かせろ」
「意見?」
「おまえは、マーカーを信じるか?信じねぇか?」
「オレは、おまえを信じてる。だから、おまえが信じるほうを、信じるぜ。真実がどうあれ」
 エドワードは、どさ、とソファに背中を預けてすわり、足を組んだ。
「だったら、“知り合い”だ」
 ぎんと強いまなざしを向けられ、エネルは見慣れていると思っていたが、その勢いに呑まれそうになり、逸らすためにタバコを口にした。
 そのとき、呼び鈴がなったので、アルフォンスが迎え入れた。

「戻りました」
 現れたのは、エイジとマーカーだった。
「ちょうど、一緒になりましたので」
 エドワードとエネルが、視線をむけたが、流れていた空気に、エイジは目を丸くする。
「どうか…しましたか?」
「いいとこに来た。座れ、マーカー」
 マーカーは言われるまま、エドワードの向かいのソファに腰を下ろした。
「なんです?」
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