未来軍部11
□双頭の合成獣(キメラ)
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「ふふ」
ふいに、エイジに笑われて、エドワードは「なんだよ」と不機嫌に睨みつける。
「いえ、珍しくうじうじ悩んでらっしゃるから」
「オレだってたまには悩むぞ」
「僕には、その答えは分かりませんが、どちらかというと、貴方の気持ちのほうが分かるかもしれません。僕だって、『お兄ちゃん』でしたから」
エイジは、サンドイッチの最後の一口を口にいれ、コーヒーで流し込んだ。
「無理に答えなんて、出さなくていいと思います。だけど、中佐の考えを聞くのは、大事かもしれませんね」
そういうと、エイジは「では、仕事に戻ります」と立ちあがって、行ってしまった。
「…それは、ちょっと怖いんだ」
――兄さんがいなくても、僕はできるよ。
そういう言葉が、なんでか自分の『恐怖』になる。頭では、分かっているつもりだ。アルフォンスは、なんだってできるし、自分よりもすぐれていることはたくさんある。
認めていながらも、認めたくない、というのは、やはり『負けたくない』からなんだろうか。
「はあ…」
エドワードは、もう一息だな、と自分を鼓舞するように、立ちあがった。
☆
夜、エドワードが任命された仕事を終わらせ、エマリ―の仮執務室に入ると、アルフォンスもそこにいた。
「終わったか」
エマリ―の言葉に、「ああ」と短く返事をして、報告書を提出する。
「エルリック中佐の報告を一緒に聞くか」
そういわれて、エドワードはアルフォンスを見上げた。
「ああ」
「テロの組織は壊滅に追いやりましたが、テロ集団の中にも、錬金術を使う人間はいませんでした」
「では、一体だれが、起爆装置である、遠隔錬成を使ったのか――」
「まだ、捜査せねばならないようですね」
「エルリック准将は、どう考える」
「…見たことのない錬成陣だった。あの、研究内容の書類に記されている錬成陣と、現場にあった錬成陣は、違っていた。まるで、研究内容の解読方法が別にあるかのようだ」
エマリーがす、と目を細めた。
そして、自分のデスクにあった、研究書をエドワードに渡す。そして、一冊の本と。
「おまえには、復興より、この解読をやってもらおう」
「この、本は?」
「錬丹術の流れを組む、とある人間の研究をまとめたものだ」
「とある人間…?」
エドワードの鋭く光った視線を無視するかのように、エマリ―はつづけた。
「錬丹術の記述はこの国には少ない。参考になるだろう」
「……」
エドワードはそれを受け取った。
「今日は、帰りたまえ。エルリック准将は、明日以降、司令部に来なくともよい。図書館にでも詰めろ」
そういうと、エマリ―は、立ちあがる。
アルフォンスは、敬礼をして踵を返しつつ、エドワードも何か言いたげだったが、踵を返した。
☆
「食事は?」
「食べてない」
「寄っていく?」
アルフォンスが夜の道を歩きながら、指差したのは、レストランだった。酒の類も多く置いてある場所だ。
「うん…」
それを了承し、席につくなりアルフォンスは、溜息をついた。
「兄さん、何か、悩みでもあるわけ?」
「え、なんで」
「元気ないし、それに、溜息ばっかりだ」
「そんなことねーけど」
「何か、言いたいことでもあるの?」
「別に、ないけど」
「今朝のこと?」
そう言われて、エドワードはアルフォンスを見上げた。
「何か、言われた?僕がエマリ―中将の部屋から出た後に」
「…別に」
「もう、そればっかり」