未来軍部11
□双頭の合成獣(キメラ)
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そんな話をしていると、スープとサラダが運ばれてきた。
サラダをつつきながら、エドワードはちらり、とアルフォンスを見ると、感じていた視線通り、自分をじっと見つめていた。
「兄さん」
「…なんでもねぇって」
「なんでもないって顔をしてないから、聞いてるんだけど」
ぎゅ、とエドワードが唇をかみしめたので、アルフォンスは心配そうに眉根を寄せた。
「…おまえに、聞けないことだって、あるさ…」
ぼそ、とつぶやくように言う。そのまま、沈黙が降りてきたとき、メインの皿が運ばれてきて、エドワードは何も言わずにそれを食べ始めた。
僕に、聞けないこと…?
アルフォンスは、フォークを持つ手に力が入る。そして、眉を吊り上げて、兄を見た。
「どうして、僕には聞けないわけ」
きゅっと寄せられた兄の眉根。
「怖い…からかな」
「怖い…?」
それきり、兄は再び無言で食べ始める。
そのあと、家に帰っても、二人は何も話すことなく、過ごしていた。
☆
朝早くに出て行ったアルフォンスだったが、ちゃんと朝食を用意してくれていて、エドワードはそれをありがたく頂く。
今日、自分は図書館に行って調べ物をすることになっている。護衛もつくらしいが…。と思った矢先、家の呼び鈴がなった。
「はいよ〜」
「マーカーです。お迎えにまいりましたが」
「護衛って、おまえか」
「不満でも?」
「いいや、別に。ちょっとまってろ」
ジャケットを羽織って、エドワードは家を出た。マーカーが用意した車に乗り込み、中央図書館へむかった。
数時間、本を探したり、解読したりして、マーカーからしたら、何をしているのかわからないが、集中しているようで、会話らしい会話はない。
だが、マーカーが、その作業を止めなかったら、昼食もとらなかっただろう。
昼食は、サンドイッチとコーヒーくらいしか、とらないだろうと思って、マーカーが用意したのだが、それを食べながらも、もくもくと、何かを書いている。
だが、
「ああもう!」
それをぐしゃぐしゃ、と丸めては、ぽい、と床に放りなげる。それを、拾うと、マーカーは一枚づつその皺を伸ばして、自分の手元に置いていた。
ふたたび、エドワードが丸めた紙クズを、放り投げると、それは部屋の扉のほうへ飛んでいった。丁度入室してきた、男がそれを拾う。
皺を伸ばして、それを兄の傍らに置いた。
「兄さん」
その言葉で、エドワードは、顔をあげた。
「アル、どうしたんだよ」
「昼食はとったのか、心配になって」
「マーカーが用意してくれた」
「みたいだね」
食べかけのサンドイッチを見る。
「どう、解読の方は」
「なんともいえんな。錬丹術になると、難しい」
「…錬丹術…そういえば、エマリ―中将も錬金術が使えたよね」
「ああ。それに…胸にアノ痣がある」
二人は、脳裏に、半円に棘のささったような形の痣を思い出す。
「うん。何か、関係するのかな」
「さっぱりわかんねぇ」
エドワードは、残りのサンドイッチをほおばった。
「それより、そっちは」
「テロ組織とのつながりがある線をたどるより、バージェス中将のバックを洗ってみたんだ」
す、とそれを聞いていたマーカーが目を細めた。
「…タイヤンという人間が、錬丹術のような方法を、使っている」
「タイヤン…?」
「その線、調べましょうか。護衛は、中佐にお任せして」
マーカーが立ち上がる。
「何か、思い当たることでもあるのか」