未来軍部11

□蒼い風
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1day

『あ、アル?オレ。一日は、仕事を終えた』
夜、司令部にあった電話の声は、ずいぶん疲労の色が見える。
「慣れないことだから、疲れたでしょう」
『ああ、だけど…』
「だけど?」
『戦ってくれた人がいるんだよ。ここに――』
 兄の表情は電話では見られない。だが、手に取るように、その表情が分かった。
『信じで待ってる人がいるように、戦ってくれた人がいる。最期の言葉を知ることは、できないけど、感じることはできる。もっと、何か自分にはできるんじゃないかって、そう思うよ』
「兄さんらしいね。見るもの、知るもの、感じるもの、すべてを吸収する力がある。それを知って、上官たちは兄さんを試すんだろうけど…」
それが脅威になることを、知らないんだ。マスタング大将以外は。

「約束、覚えてるよね。僕のいないところで、死なない約束」
『覚えてるよ。言っただろ。オレの遺体は、集めさせないよ』
「信じてる」
『おう。じゃあな。また明日』
「…うん――気をつけてね」

 受話器をそっと置くと、アルフォンスは席をたち、窓の外を覗き込む。
 墨を流したような、漆黒の夜。

 今も、どこかで戦ってくれている人がいる。
 それを、悲しんでいる人もいる――。
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