未来軍部11

□蒼い風
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2day
「准将自ら、行うことはないと思います。自分が、やります」
 下士官にそういわれて、エドワードは、頬を伝う汗をぬぐった。真っ白な手袋はすぐに、茶色に変わり、その土は汗と共にエドワードの頬に張り付いた。
「それは、オレに、ここで一生懸命戦ってくれた人への弔いができない、ということか」
「そういうことではありません!自分らが…」
 数人の下士官にそういわれて、エドワードは苦笑した。
「将軍が、泥まみれになって、あるいは血だらけになって、地をはいずりまわるようなこと…」
「准将だからだ。オレの下官たちでもある」
 エドワードは、そっと小さくなってしまった、人を、両手で抱える。
 きっと、もともとは自分よりも、背の高かった人だろう。

「人が人を弔うのに、階級なんか関係ない。もちろん、オレは、ウエからの命令できてるので、期間限定だが、その短い間でも、任務はまっとうする。どんなことであろうと」
 そっと、遺体を箱に納め、エドワードは立ちあがった。
 漂うのは、硝煙のにおいに、血の匂い。異臭ばかりだ。
 それを、風が運び、自分の髪をなでる。

 そ、と両手を合わせる。
 それは、錬成ではなく。

 そして、離した手のひらを、天に向けて。
 そこに、蒼い風を、
 感じる。
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