未来軍部11

□軍服小物小話
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一件落着。
テロの容疑者を、逮捕して帰還しようとしたエドワードとアルフォンス。そこへ、ふとエイジとエネルが報告を兼ねて、やってきた。
 まだ、土砂降りの雨の中だ。
「今回の容疑者他、24名の居場所を突き止め、全員を捕縛しました」
「ごくろーさん」
 報告は、きわめてマジメな内容だったが、エネルは、気になることがあり、エドワードの頭頂部をじ、と見つめていた。
「…」
 自分たちの、黒いコートのフードは、いたってノーマルだと思う。見間違いかと思い、エイジやアルフォンスの頭頂部を見たが、いたって普通のフードだった。司令官用?いや、それとも、エドが小さいから、大きく見えるだけ?やっぱり見間違い?
「どうしました?」
 エイジがふと、エネルの視線に気がつき、そう声をかけると、エネルはまっすぐエドワードの頭頂部を見ている。
 つられてエイジも見上げた。近くにいた、マーカーも同じように見て、アルフォンスの横にいたアルフォンスも、エドワードを見る。
「なんだよ?」
 みんなに見られて、エドワードは首をかしげる。
 雨も酷いので、すぐに帰還したほうがいいと思うが、どうしても気になったエネルだ。
「エドの黒コートのフード部分、大きいよな?」
「え?」
 エイジも気にしてみると。
「…もしかして」
 近くにいた、マーカーも気がついて、クス、と笑った。
「なんだよ!?何かついてんのか!?」
 アルフォンスは、何も言わないが、微かに笑みを引いている。
「もしかして…ネコ耳仕様ですか…」
 エイジの言葉に、エドワードは、「んん?」と首をかしげる。
「ま、まあ、いいじゃないですか!司令官って分かるし、雨が酷いですから帰還しましょう」
 アルフォンスがあわてて、エドワードを車に押し込んだ。


「ただいま〜」
 受付の女性士官にそういうと、お疲れ様です、と笑顔を返してくれた。
「准将のコートかわいいですね」
「ん?」
 やっぱり気になることを言われて、エドワードは、首をかしげるが、車を置いてきたアルフォンスがあわてて兄の背中を押す。
「着替えよう。僕のインナーシャツあるし」
「いいじゃん、乾かせば。このハイネック気にいってんだよ」
「いいの。それ少佐のだし」
 そのままずるずると引っ張られて、更衣室に向かわせられる。廊下は、外が暗い為、明かりが灯されていた。
 ふと、窓ガラスに映る自分の姿が目に入った。
「ぬあっ!?」
 他の士官たちのコートは、ふつうのフードだった。なのに、なんか自分だけ大きいモノがついている。
「ねこみみー!!」
「あ、バレた…」
「アルー!!」
 こんなことしたのは、アルフォンスしかいない。それに、現場に出る際、コートなんて忘れて着ないのが普通のエドワードに、手渡すのもアルフォンスだけだ。
「いいじゃない、似合ってるし!司令官ってわかるし!そんなことより、着替えようね!」
 それ以上何も言わせない様に、更衣室に押し込められた。
「なあ、このハイネックのインナー買っといて。オレも欲しい」
「ダメ」
「なんでっ!?いいじゃん、動きやすいし!」
「ダメ」
「だから、なんでっ!?」
「兄さんには、シャツが似合ってるし、司令官はやっぱりYシャツだよ」
「決ってないじゃん!狙撃班とか、ハイネック多いじゃん!」
「関係ないって。ガネット少尉は、シャツだし」
「ハイネックの時もあるもん…」
「とにかく、兄さんは、Yシャツって決ってるの」
「意味わかんねー!だったら、理由をいえ」
「理由?そんなの脱がせやすいからだよ」
「ぬあああっ!?そんな理由!?」
 エドワードの怒りとは裏腹に、アルフォンスは、にっこり、と笑顔だ。
「ふふ…医療面で、だよ。ふふ…」
 だが、これ以上何も言わせないような、黒いカオス的なオーラも発生して、エドワードは思わず後退する。
「ほら、さっさと着替えて」
「ホントに医療面なのか…」
 確かに、怪我を負った場合、ボタンをはずすだけで、患部を見やすいかもしれない。いやいや、でも、アルだったら、錬成で服なんて分解できるから、同じじゃん!?
「うん」
 これ以上追及しても、無駄かもしれない。反対に、何かされるかも…そう不安がちらついたエドワードは、手渡されたYシャツに、黙って袖を通した。
「うん、やっぱり兄さんには、Yシャツだよ。似合ってる」
 きらっきらの笑顔でそう言われて、エドワードは「…そういうことにしとく…」と反論はしなかった。

後日――
 資料室でアルフォンスがサカった時、思わずつぶやいた言葉。
「…やっぱり、Yシャツのほうが、脱がしやすいよね」
「っ…ぁあっ!」
 やっぱり、コッチなんじゃね〜かぁあああ!と思ったが、反論できない『今』言うなんて、さすが策士…なのかも。

おわり。
軍服小物もぇ。
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