未来軍部11

□軍内広報誌
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「あ。白髪みっけ。ここは、同情で染めといてやるか」
 そういいつつ、黒髪まで油性ペンで書いている。
「あ、はみ出した!」
「おかっぱになってる!」
「ぎゃははは!」
 エドワードとエネルの大爆笑に、エイジは、遠く中央にいる大将に同情してみた。

「ふふん。そうか…無能大将に負ける気はしないが、次号の広報誌が在庫として燃やされるのは、ヤだな。それに、オレの写真をページに増やしたら、文章の内容は減るよな」
「…そうだな」
 にやり、と笑ったエドワードに、エネルとエイジは「また何か考えてる…」と苦笑をこぼした。



翌日――
「では、准将、ありがとうございました。また、刷り上がり次第、お持ちします」
 担当の士官が出て行くのを見て、アルフォンスは、広報の取材が終わったんだと思い、彼がカメラを手にしていることに気がつく。
「もしかして、写真、ここで写したの?」
「うん」
 アルフォンスは、写真が出来上がったらすぐにチェックをしないと、どんな表情で写っているのか恐ろしい。しかも、A号が、エドワードの足元で眠っている。
「この書類見ておいて。じゃあ」
 アルフォンスは、書類を置くなり、すぐに踵を返して、出て行ってしまう。
「なんだぁ?」
「くうん?」
 二人、正確には、一人と一匹は、首をかしげた。


 アルフォンスは、さっそく今撮影したという写真の現像をお願いした。
数時間後に、それを確認。
「思ったよりまともだった…」
 執務デスクの椅子に座って、いつもの兄よりも“おすまし顔”だ。
 これならいいか…と許可を出そうとした瞬間、兄が背後にしている壁に、落書きが。アルフォンスからしたら、ちゃんとしたことが書いてあることは、わかるのだが、こういうことは紙や手帳にメモしておけ!と怒鳴りたくなるような、錬金術の記述だった。
 一般の人間が見たら、落書きとしか思えない。まあ、錬金術の記述といっても、兄の思いつきメモなので、錬金術の達人が見たとしても、わからないだろう。が、念には念を入れておいたほうがいいだろう。
 エドワードは、その写真を持って、執務室に駆け込んだ。
「どうした?」
「この写真、オッケー出すわけにはいきません」
「えー!なんでだよ!カッコよく写ってただろ!?」
 ばん、とテーブルに叩くように出されたそれに、エドワードは、まじまじと視線を落とした。
「なんだよ、カッコイイじゃん」
「ここだよ。ここ!」
 アルフォンスが指差した、写真の左端。
「落書きと錬成陣が描かれてますけど!?」
「うおっ!」
 いそいで、振り向いたら、そこの壁にはしっかりと描かれてあった。
「いいじゃん、これくらい。落書きだし」
「落書きのある司令官執務室なんて、威厳のかけらもないでしょうがっ!」
「でも、へのへのもへじ〜とかじゃないんだから、いいだろ」
「そういうことじゃない!」
「なんだよー。じゃあ、いいよーだ。外で撮ってもらうから」
 子供のように拗ねてから、エドワードは立ちあがり、先ほどの広報誌かかりの士官を探したのだった。

 そして、数時間後。
「どこのモデルだ!俳優だ!」
 そして、先ほどと同じように叱られてしまったエドワード。
「なんでだよー!オレの良さを最大限に引き出す、士官のカメラテク!惚れたね!」
「はああっ!?」
 アルフォンスが、デスクに並べた写真の数々。
 どうやら、中庭で撮影したらしい。
「たとえば、この『木陰で頬笑む准将』なんて、カッコイイだろ!」
「胡散臭いよ!」
「じゃあ、『水も滴る良い男准将』」
「ぎゃー!スケてる!乳首ピンクまるみえ!」
「んだよ、男なんだからいいだろうが。じゃあ、『シャツがはだけてもイイオトコ准将』」
「キスマーク見えてる!」
「マジ!?それはダメだ!じゃあ、この『にっこり、さわやか笑顔准将』」
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