未来軍部11

□アルフォンス・エルリック中佐の入室を禁ずる!
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 一方、東方司令部――
そ、っと司令官執務室の扉を開いて、きょろきょろと大部屋を見渡すエドワードに、思わず、クスリ、とソニックが笑った。
「どうしたの?中佐は、出張よ」
「あ、そうだったっけ」
 すっかり忘れていた。
「喧嘩でもしたの?」
 ソニックが書類を見つつも、何気なくそう尋ねた。
「喧嘩…っていうかさ。オレがキレたの」
 どうしてキレたのか、と思ったがソニックはあえて言わず、
「そう」
 と簡潔に返事をした。
 だが、エドワードは唇を尖らせて、近くにあった、デスクの椅子に、どか、と座った。
 同時に、ぎゅ〜ぐるぐる〜という腹の虫。
「まず、腹ごしらえでもしてきたら?」
 くす、とソニックに笑われたが、エドワードは「いいの」と頬を赤く染めつつもそっぽを向いた。
「アルが帰ってくるまで、待ってる」
「でも中佐は、夜までは帰ってこないわよ?」
「いいの」
 そういうと、エドワードは再び執務室に入ってしまった。
「なんだったのかしら?」
 執務室から出てきたのは、なんのため?ソニックは首をかしげたが、書類を書くのを止めなかった。

「憲兵司令部は、我々東方司令部などの、地域司令部となんら変わりない立場。その状況を分かっていらっしゃるのでしょうか。その下の憲兵たちの不甲斐なさに、あきれることも多々あります。我々を指示するまえに、憲兵組織の取り組みを、今一度考えていただきたいと思っております。そちらでは、無理とおっしゃるのならば、我々地域司令部がしゃしゃり出ても構いませんが。新大総統になる前は何かと、テロなどの破壊活動が活発になっております。憲兵司令部とも、強く協力して行かねばならないとも考えておりますが、あまりにも憲兵司令部の失態や憲兵組織の統率力のなさに、足手まといだという意見すら出ております」
「そこまで言えるのか!東方司令部が!」
「言いたくなる、の間違いです。憲兵の方々にだって、素晴らしい方は多々いらっしゃるのに、組織自体が堕落しているため――」
 まだまだ続くアルフォンスの口攻撃に、エネルは近くで聞いていて、辟易していた。普段は、もう少し相手の出方を見るのが、アルフォンスのやり方だが、今回は今朝のこともあってか、べらべらとひたすら攻撃を仕向けている。この様子じゃあ、すぐにでも中央に連絡が行くだろう、とエネルは思った。
 が、やっぱりアルフォンスの攻撃は止まらない。

 だが、さすがアルフォンスだ、と思う場面がやってきた。
 いつの間にか、にっこり、と王子様スマイルが出ている。
うまく、憲兵側を言いくるめ、逆なでしてきた感情を、うまくコントロールし、さらに自分たちが有益になるようにもってくる。
「では、そのように、司令官に報告させていただきます。合同訓練の内容は、後日こちらから提出させていただきます。それの了承を得てから、実行致しましょう」
 再び、にこり、と笑ってアルフォンスは立ちあがった。
 書類をまとめて、鞄にしまいこむ。
「では、失礼します」
 頭を下げてから、アルフォンスはその部屋をスタスタ出て行ってしまう。
「おいおい、まてよ」
 慌ててエネルもそれに続いた。

 アルフォンスは、早歩きで駅まで向かい、銀時計で時間を確認。
「ぴったり」
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