未来軍部11

□司令官日誌
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「ぐはぁ〜今日は、書くことねぇなぁ〜」
 エドワードは、ぐんっと伸びをして、ペンを置いた。
 気分転換でもするか。
 アルフォンスが来ないうちに。
…司令官執務室から、こっそりと抜け出したのだった。

 何気なく中庭に出てみると、車庫の方から、ぎゃはは、と笑い声が響いていた。気になったエドワードはそちらへと足をむける。
「准将!」
 一人がエドワードの姿を発見するなり、敬礼をすると、一斉に全員が敬礼をする。エドワードは、ひらひらと手を振って「いいからいいから」と、近づいてきた。
「洗車かぁ」
 泡まみれになった車両がいくつもあり、ホースで水をかけたりもしている。
「はっ」
 みると、まだまだ泥まみれの車がある。このまえの雨の日の出動で、汚れたのだろう。
「オレもやろうかな」
「い、いえ!とんでもないですっ!司令官にこんなことさせられません!」
 アルフォンス隊のゴードンがそういう。
「なんでだよ〜面白そーなことも、仲間にいれろよ」
 下士官がすべきことを、“面白そうなこと”と言ってのける、司令官に、一同は苦笑した。
「で、では…」
 やりたいという上官に、ノーと言えるわけもなく、洗車用のスポンジを渡したのだった。



 アルフォンスは、司令官執務室に、兄がいるものばかりと思い、「准将、この――」と話ながら入ったが、その姿が見えない。
「逃走されたかっ…!」
 だが、書類はちゃんと見終わったようで、デスクにはなかった。代わりに、
「なに、この『司令官日誌』っ…!」
 日誌を日々書くのは日課なのだが――いや、エドワードは、毎日は書かないが――この日誌の内容。
「小学生でしょ!この日誌内容っ…!」
 本当に、本当に大人が書いたのっ!?
 しかも、国家錬金術師ってアタマいいんでしょ!?一般的にっ!いやいや、兄さんに一般的は通用しないか…。
 一気に頭痛をおこしたアルフォンスは、司令官執務室に設置されている司令部内放送のスイッチをオンにした。
『エルリック准将、直ちに執務室まで御戻りください。繰り返します、エルリック准将。執務室まで御戻りください』
 ……五分経過。
……十分経過。
「来る気ナシ」
 もしかして、外回りについて行ったとか?今日の外回りは、マーカー少佐だ。いや、少佐は、大部屋にいた。
「ったく!」
 待っているより、自分の足で探したほうが、確実かもしれない。
 アルフォンスは、執務室を飛び出した。

「レヴィ大佐!准将しりませんか!」
「わたくしも今、探しておりますの。エドワード様に、素敵な軍服ができあがりましたので」
 うふふ、とアルフォンスにみせた軍服は真っ赤で、相変わらずフリルがたくさんついていた。
「あ、そうですか」
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