未来軍部11

□司令官日誌
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 これは、この人より先にみつけないと、再び逃走されるな。と思ったアルフォンスは、「じゃあ」と、さっさとレヴィの前から去っていく。
「ったく、どこ行ったんだ」
 次に、食堂へ向かった。

「エイジ少佐、エネル大尉」
 エイジとエネルが相変わらずな場所で、コーヒーをすすっていた。
「どうしました?」
「准将しりませんか?もちろん、仕事しない准将です」
「見てませんけど…。司令部内なら、放送が聞こえてもいいもんですね」
「そりゃ、おまえ、アレだ。アルの声の放送なんて、無視するに決ってるだろ。『聞こえなかった』って言いわけして」
 エネルの言葉に、思わず納得しそうになった。緊急事態だったら、どーすんだ、と思いつつ、アルフォンスはにっこり、と黒い笑顔で
「大尉、実は居場所知ってるでしょ」
 エネルは、真っ青になって、
「しっ、知りませんっ!」
「ホントですか」
「ぁ〜…エドは見てねぇけど、エドらしき声は聞いた…カモ」
「どこでです!」
「車庫」
「車庫っ?」
 一番、兄に用事のなさそうな場場所を聞いて、アルフォンスは首をかしげた。だが、すぐに、外へ飛び出し、車庫のほうへ向かった。

「あはは!」
 笑い声が響き、なんだか楽しそうな雰囲気だ。
 ぱっとみて、兄の姿は見えないし、どうみても士官たちが、楽しげに洗車しているなぁ、としか思えない。
「なぁ、コレも洗うんだったっけ」
 ひょっこりと現れた、一般軍人よりもずっと背の低い人間。全身、もくもくと真っ白な泡でおおわれている。
「はい、お願いします」
 そう言われて、泡人間は、ボンネットの上に登り、車の屋根を洗いだした。
「ふんふんふ〜ん♪もっくもく〜あわあわ〜♪」
 なんだか、機嫌よさそうに鼻歌まで歌っている。
 …たしかに、小春日和の今日。外で身体を動かしたりすることの好きな兄を、部屋に閉じ込めておくことなんて無理に近い。
まあ、下士官がやる仕事とはいえ、洗車や清掃だって、立派な仕事だ。
 それに、なんであんなにも生き生きとしてんだ、兄さんは。

 急に脱力したように、アルフォンスは肩の力をぬいた。
「…あの、すみません、隊長…」
 ゴードンがアルフォンスの怒りを知ってか、そう後ろから声をかけた。だが、アルフォンスは笑顔で、
「いえ。邪魔して、こちらこそ、すみません」
「とんでもないですっ」
 そこにいた人間が敬礼をするが、アルフォンスは再び兄を見た。

「おーい!水くれ〜!」
 エドワードが車の上からそういうので、アルフォンスは近くにいた下士官からホースを受け取った。
 ホースの水は勢いよく飛び出し、エドワードの顔面に直撃。
「うっぎゃあぁああ!」
「すみません、准将」
 ぶるぶると顔を振って、泡と水を吹き飛ばした。
 そして、改めて見ると、にっこり笑顔のアルフォンス。
「って、アルっ!?」
「何をしてるかと思えば…」
 あきれた弟だったが、表情は幾分柔らかだ。
「洗車だって、仕事だろっ」
「もちろん」
 怒られると思ったのか、びくびくしていたエドワードだったが、アルフォンスはクスクスと笑っていた。
「ほら、車の泡、全部流すよ。スポンジでこすり落として」
「お、おう」
 アルフォンスがホースの水をかけ、エドワードが綺麗に泡を落とす。そんな作業を、楽しげにやっているツートップを見て、下士官たちも思わず和んでしまった。

「…ほんとに仲がいいんですね。お二人は」
 ぼそ、と最近東方司令部に異動になった下士官がつぶやくと、ゴードンとスミノフも笑った。
「しかも、司令官が洗車なんて、しないよな」
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