未来軍部11

□司令官日誌
4ページ/5ページ

「まったくだ」
「本当に、あれで、国家錬金術師なんでしょうか。オレのイメージは、もっと怖かったり、近づけない雰囲気があったりするんですけど」
「ある意味近づけない雰囲気があったりするけど…。あれで、事件となったら、顔付き違うし、みんなに優しいエルリック中佐も、いざとなれば、司令官命になるし。あの二人だけは、『一般』とか『通常』という言葉が似合わない」
「どうして、あんなにもカリスマ性があるのかは…謎だ」
「うん」
 ゴードンとスミノフがうなずくと、下士官も改めて二人で、喧嘩しているのか楽しんでいるのかわからない二人を見る。

 泡が飛び交って、アルフォンスの頭や身体にも、ところどころついていて、仕返しとばかりに、水をかけられるエドワード。

「洗車するのは、これだけかぁ?」
 エドワードが近くにいた下士官に尋ねると、「はい、ありがとうございました!」と敬礼された。
「そっか」
「まだやりたいって顔してるよ」
「バレたか」
 べ、と舌をだしたエドワードに、アルフォンスもあきれた笑いをこぼす。
 だが、「はっくしょいっ!」とエドワードがくしゃみをしたことで、
「シャワー浴びてきた方がいいよ。暖かいといえど、もう秋なんだし」
「ほいほーい」
「あとお願いしてもいいですか?」
 アルフォンスがゴードンたちにそういうと、二人は「ええ」と快くそれを承諾。二人は、何やら言い合いをしながら、司令部内に入っていったのだった。

「…新顔の君」
「は、はいっ?」
 ゴードンとスミノフが真顔で新しく配属された下士官を見た。
「こういうとき、シャワー室は、一時間ほど使用禁止だ」
「うむ。近づかないほうが身のためだ」
「は、はぁ…」
 言われた意味がわからないが、下士官はうなずいておいた。


 シャワー室の奥にある唯一浴槽があるスペースに、兄を押し込めた。ずぶぬれの軍服を脱がせて、ぽいっと浴槽に入れ、湯が溜まるのを待つ。
「なんで、おまえも入るんだよ」
 浴槽の隣には、シャワーもある。そこでアルフォンスは、頭からお湯を浴びていた。
「泡だらけにしたの、誰だよ」
 ぶくぶく〜と浴槽のお湯に口まで沈み込む。
「大体、仕事もしないで、何やってたの」
「おまえも参加したじゃん。書類終わってたし。で、一体何の用事だったんだよ」
「あ、そうそう。思いだした!司令官日誌、あんな小学生でも書ける内容、監査で通らないからね!?」
「めんどくさいじゃん」
「まとめて書くからでしょーがっ!」
「だいたい、なんでオレだけあんなのあるんだよっ!みんなで、回して書こうぜっ!」
「散々仕事増やしてきたみんなに、さらに仕事を増やせっていうの?」
「ぶう…」
「一応、みんなに聞いてみるけどさ」
「やった」
「ちゃんと、温まって。それとも――熱くして欲しい?」
 す、と細められたアルフォンスの瞳。
「うっ…」
 蛇に睨まれたカエルのごとく、動けなくなってしまった。

 突如、廊下で『えどわあどさまぁあああ!』という声に、ビク、と大きく震える。
 だが、その声は通り過ぎていってしまった。

 それにほっとしている合間に、アルフォンスのボディソープに塗れた指が、エドワードの首筋に触れる。
「っ!」
「洗うだけだよ」
 そういいつつ、手つきがいやらしいんですけどっ!とは、怖くて言えない…。

 首筋から、するすると胸にまでそれは下りて行くのだから。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ