病
□後の祭。
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「愛してるわ」
彼の耳元で愛を囁く。
彼は顔を顰める。
「お前と一緒になるくらいなら、死んだほうがマシだ」
冷たい言葉。
頭に血が昇っていくのが、よく分かる。
「何よ、私が折角愛してあげるのに!!!」
そこら辺にあったものを掴み、思いっきり殴る。
何度も何度も振りかぶり、殴る。
彼の体から出た、赤い何かが勢いよく私の顔にかかる。
何これ?
不快に思ったが、手を休めることなく私は彼を殴り続けた。
悲鳴を上げていた彼は、そのうち大人しくなった。
自分の手を見る。
真っ赤に濡れた手には、金槌が握られていた。
彼の顔を見る。
…?
顔?
そんなものは無い。
彼の顔は、もう無い。
あるのは肉片のみ。
私が愛してたのは、こんな肉片じゃない。
後の祭。
今、後悔しても、遅かった。
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