病
□リタイア=死
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冷たい床。
無機質な真っ白い壁。
窓の無い部屋。
音も、匂いも、何もない。
こんな生活が何日、いや何年続いているのだ。
「ぅ、」
ドアを開けようとする。
開くはずの無いドア。
それでも、俺は出ようとする。
発狂しそうになる。
誰か、いっそ俺を殺してくれ。
もう、楽にしてくれ。
食事のときに出されるフォークを見る。
そうだ。
目を耳を鼻を、潰してしまおう。
最初から壊れていれば、何も感じない。
そして俺は、フォークを手に取った。
「室長、13番が手にフォークを持っています」
「そうか、最後の被験者もとうとう狂ってしまったか」
室長と呼ばれた男は残念そうに、首を振った。
「新しい被験者たちはいるのかね?」
研究員らしき男は、分厚い紙の束を渡した。
「次期被験者のリストです」
時給3000円、お支払いします。
新規バイト募集!
長期の方、歓迎。
そんな広告に釣られた、哀れな被験者たちの末路。
リタイア=死