小林、

□帰り道
1ページ/1ページ



自転車をこぐ小林。

その背中にしがみつくあたし。


「小林、」

「何?」

呼ぶと必ず返事をしてくれる。

「なんでもない」


そうか、と言ってまた沈黙が流れる。


「小林、」

「ん?」

「あんたっていい奴だね」

訳わかんねぇよ、と小林はカラカラ笑った。


背中から伝わる、小林の体温。

もう少し感じていたくて、強めに抱き締める。


「小林、」

聞こえるかどうか、わからないくらい小さな声で呟いた。

「呼んだ?」

小林が振り返る。

「ちょっと、前見てないと危ないよ」

そうだな、と言って前に顔を戻す。


そっと、そっと。

小林の背中に寄りかかってみる。


暖かくて、いい匂い。

意外と大きな背中。

全てが愛しくて、恋しくて。

好き、と口を動かす。

でも声は出さない、出せない。


小林、

どうしようもないくらい、あんたのことが好きだ。




.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ