小林、
□帰り道
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自転車をこぐ小林。
その背中にしがみつくあたし。
「小林、」
「何?」
呼ぶと必ず返事をしてくれる。
「なんでもない」
そうか、と言ってまた沈黙が流れる。
「小林、」
「ん?」
「あんたっていい奴だね」
訳わかんねぇよ、と小林はカラカラ笑った。
背中から伝わる、小林の体温。
もう少し感じていたくて、強めに抱き締める。
「小林、」
聞こえるかどうか、わからないくらい小さな声で呟いた。
「呼んだ?」
小林が振り返る。
「ちょっと、前見てないと危ないよ」
そうだな、と言って前に顔を戻す。
そっと、そっと。
小林の背中に寄りかかってみる。
暖かくて、いい匂い。
意外と大きな背中。
全てが愛しくて、恋しくて。
好き、と口を動かす。
でも声は出さない、出せない。
小林、
どうしようもないくらい、あんたのことが好きだ。
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