小林、

□桜の告白
1ページ/1ページ


「おはよう、藍」

後ろから聞こえるのは、聞きなれた声。


「…桜」

少し、目が腫れている。


「どうしたの、目」

あぁ、と言って目を前髪で隠そうとする。

「何か、あった?」

心配そうに顔を覗き込むと、桜はうっすらと笑った。


「昨日ね、小林君にメールで告白したの」

ずきん、と胸が痛んだ。


「どう、だったの?」

本当は聞きたくないはずなのに、聞いてしまう。


「駄目、だった」

目から涙を零す友人を見て、哀れに思うと同時に安堵してしまった。


「さく、」

「好きな人が!!いるんだって…」

あたしの手を振り払い、そう言い放った。


「その人の名前はね、」

「やめて!!!」

ぱしん。

乾いたような音に、嗚咽。

思い切り、桜の頬を叩いてしまった。


「あ、ごめ…」

謝ろうとするあたしに背を向け、桜は走り去った。


その場にしゃがみこむ。

かたかた、と震える体を自分で抱きしめる。

あぁ、あたしは桜を、大切な友人を叩いてしまった。

ふわり、と肩に何かが掛けられる。


後ろを振り向く。

「…小林」


後ろを向くと、気まずそうに小林が立っていた。

あたしの肩には、小林の学ラン。


「聞いてたの?」

「あ、その…ごめん」


目を逸らして、謝る小林。


「桜、泣いてた」

「あぁ」

「あたしのせい、だ」


そう言って、顔を隠す。

泣いているのを見られたくない。


「あんま、自分を責めんなよ。第一、元々の原因は俺だ」

この前と違い、優しく頭を撫でてくれる。


小林に甘えたい。

そんな気持ちが、ふつふつと沸き起こる。

そしてあたしは、そっと小林の胸に頭を預けた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ