小林、

□友情と恋
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そういえば、小林の教室ってどこだっけ。

あたしから迎えに行くのは、はじめて。


いっつもいっつも迎えに来てくれて、

いっつもいっつも笑顔で、


遣る瀬無くなって、その場にしゃがみこむ。

あぁ、あたしって小林がいないと駄目じゃん。


「おい、どうした?」

前から声がする。

いつもの、声。

「っ…何でもない…」

あたしは顔を上げずに答える。

声に少し嗚咽が混じってしまった。


沈黙が流れる。

はぁ、という小林の溜め息。

と、その時。

がしがし、と乱暴に頭を撫でられた。

小林の大きな手。

不器用ながら、それは小林流の励まし方なのだろう。


「小林、」

「まったく、お前は仕方ねぇなぁ」

「え?」

顔を上げると、まん前に小林の顔があった。

「俺の教室がわかんねぇなら、自分の教室から動くなよ」

「でも、」

「俺が!迎えに行くから」

小林にしては、珍しく強い口調だった。


「帰るぞ」

あたしの手を取り、ずんずんと歩き出す。

「こば、」

声をかけようとして、止めた。

しっかり握られた手を見る。

小林の手の温もりを感じ、さっきまでの悩みは吹っ飛んだ。




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