小林、

□シンパシー
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「夢でよかった」

帰り道、そう呟く。

「どんな夢だよ」

興味深そうに聞いてくる小林。


「言えるわけないっしょ」

「えー、気になんじゃん」

また、笑う。

「そういえばさ、俺も昨日、夢見た」

「どんな夢?」

そう聞くと、一瞬間があった。

「お前がさ、誰かと…どっか行っちゃう夢」

……。

「シンパシー?」

「はぁ?何だよそれ」

小林が笑いながら言う。

「実はあたしも…小林が誰かと、どっか行っちゃう夢見た」

笑いが止まる。


沈黙が流れる。

小林は黙々と自転車をこぐ。

あたしは背中にしがみつく。

ふわり。

風で小林の髪がなびく。

一瞬、小林の耳が見えた。


少し赤みを帯びた色。

夕焼けのせい、それとも…。


「小林、」

「何だよ」

いつもより、少しぶっきらぼうに答える小林。


「明日も迎えに来てね」

「…当たり前だろ」



少しだけ、通じ合った気がした。





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