果実(CP小説)♂×♂限定

恋人は先生。〜困ったときは犬丸様にお願い!〜
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肌寒い季節になり、佐野清一郎は冬休みを迎えた。
中学三年の彼は、高校入試を目前にしながら、他のことを考えていた。
『小林のおっちゃんともっと仲良うなれんかいな』
周囲の同じ受験生の中で、佐野は恋の悩みを抱いている。
とは言っても、相手は佐野の好意を知っているし、
自前の懐の広さでしっかりと受け止めている。
初めて会ったときは、なんやいいかげんそうな男やなと思っていた佐野は、
犬丸という親友(現在は神様)を通して彼の話を聞くたびに、
小林というと男についてイメージは変わった。
いやなポイントばかりが蓄積されるどころか
消え去って、信じるものを見守り、いざとなったら助ける正義感や、
ひょうひょうと表情でどんな危機も余裕で対処するところ……
また、相手を試すようないたずらな心や
ちょいちょいと相手を煽る言葉の罠を
しかけるような小悪魔な性格までぜんぶに佐野は惹かれた。
下校しながら考えた結果、佐野は神社にたどり着いた。
――困ったときは、神頼み。いや、犬丸様頼み!
『頼む! 小林のおっちゃんともっと一緒に居たい。もっとこう……』
もんもんと妄想しながら、佐野は両手を合わせた。
『頼む、犬丸! 神様の力やなくてもええから!』
佐野の必死の頼みは、天界の親友へと伝わった。



天界では、犬丸が深い深いため息を落としていた。
「佐野くん、なにかと思えば……小林さんと仲良くなりたい、ですか」
神様とかかれたプレートの置かれた机に肘をつく。
神様になってまだまだ手慣れない日々のなかで、ときどき届けられる親友の願いは大概同じものだった。
犬丸は、自分が二人をつなげた責任として、
かつて激しい戦いの中で得た大事な友の声は
無視するわけにはいかなかった。
面倒だからため息をついたわけではない。
――受験勉強のほうに、力を注いで欲しいなぁ。
そんな一途な切なる願いからのがっかりが息になって口から漏れていた。
コンコンと部屋のドアをノックがされて、犬丸はどうぞと答える。
入ってきたのは、人間界にいる
ごく普通の平凡なサラリーマンを彷彿とさせるスーツ姿の男だ。
しかし、彼は正真正銘の天界人。淀川である。
手にはゆのみをのせたお盆を持っていた。
「なんだかやつられておいでですね、大丈夫ですか?」
眼鏡の奥から、心配そうに目を細めてお茶を淹れたゆのみを机においた。
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