モナルダ

□遭遇
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くっそーあちいなぁ。
8月ってばかじゃねぇの。
いやこんな太陽が真上から降り注いで元気に活動してる時間に1パック70円の卵を買いにスーパーへ向かってる自分がバカだ。
これはアイス食べながら帰るべきだな、よし、そうしよう。
そうと決まれば………

スーパーどこだぁああああ!!!

「……迷った…」

卵のために隣町まで来たはいいけど完全に迷った。
っていうかこのわかりづらいチラシの地図が悪い!!
簡略し過ぎな書き方だから自棄になって手当たり次第路地に入ってみたけど全然ないし!



あてもなく人を求めて歩いている最中にそれは聞こえてきた。



「ひぃいい!!」
「…ってんだろ!」

路地に入って間もなく悲鳴と怒鳴り声らしきものが聞こえた。
まぁ路地裏だしそんなのはどこに行っても日常茶飯事だろう。
でもここはあの“鬼の風紀委員長”って方が治めている並盛町だ。
命知らずな奴らがいたもんだなぁ。

「金出せって言ってんだろ!」
「ひぃい!」

こっそり覗いてみたら見るからに気弱そうな爆発頭の少年とこちらも見るからに不良って感じの少年2人がカツアゲをしている最中だった。
今時珍しいモヒカンとスキンヘッドだ。時代遅れ…だな…

「ひぃひぃ言ってないで金出せってんだよ!」
「ぷっ」

全くもってその通りである。
ごめんなさいとかじゃなくてひぃひぃって…

「あぁん?誰かいんのか!」

あ、しまった聞こえてたみたいだ。

「いるよ」

まぁ隠れてやり過ごすのは自分の信念に反してるし、どの道助けるつもりだったからいいけどな。
助けた少年にスーパーの場所聞こう、うん。

「あぁん?何だテメェ!」
「通りすがりの迷子ってとこ?」

スタスタと当たり前かの様に角から出てきてさっきから顎を外しそうなほど大きくあけてる気弱そうな少年の前まで歩いてみせる。

「ふざけてんのか!!」
「全然。寧ろかなり困ってるし。」
「ちょうどいい!オメェも金置いてけや!」

いやいやちょうどいいの意味わかんねぇし。
モヒカンもスキンヘッドも喋り方が同じ過ぎて文章だと1対1みたいにしか表記できてないんだけど!
っていうかお前ら交互にしか喋れないのかよ!!

「断固拒否だな。俺はこの金がないと餓死しちゃうし。」
「そんなの俺らの知ったこっちゃねぇ!!」
「まぁ君たちみたいな頭悪そうなガキには今の話は難しいと思うけど、生きていくためにはお金って大切なの、わかる?」
「あぁ?そんなご託はいいんだよ!さっさと金だせよ!!痛い目はみたくないだろ」

ゴキゴキ
よくある不良のお約束みたいな関節を鳴らすあれをして脅しにかかってくる。

「ひぃい」
「別に?お前らみたいなチンピラに負けるほど柔じゃないからさ。」
「ちょ、君っ!!」
「調子乗りやがって!!」
「やるぞ!」
「おう」

ここでやっとひぃぃ少年がまともな文章を発したが、遅かった。
同時に殴りかかってくる右のモヒカンと左のスキンヘッド。

スッ

『?!』
「ここだよ」

「モヒ!上だ!」
「遅い。」
「ゴフゥ」

「くっそ、ぐぎゃ」


「はぁ、穏便に済まそうとしてたのに。あ、そう言えば大丈夫だった?」


というかモヒカンの事モヒって呼んでんの?


「う、うん…あ、ありがとう…じゃ、じゃあ俺はこれで!さようなら!!」

「あ、ちょ!」

逃げ足の速い少年だった。あ、こけた。

「どうすっかな…卵…」

助けた少年にも逃げられちゃったし。
まぁさーちょっとジャンプして踵落としして着地したと同時に裏拳入れるなんて喧嘩慣れしてるようなヤツにしか見えないし、怖いよなぁ。

もう帰るかー汗かいたし、アイスでも買って家でゴロゴロしよ、それがいい。
そう思い明るい路へ向かおうとした時だった。





「待ちなよ。」
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