ビル†

□読書家★
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壁際の書棚には天井に届く勢いで本がたくさん並んでいる。


仕事で使う資料などは別の部屋にあるので、ここにある本は純粋な私物だというから、アリスは見る度に感心すると同時に目眩を覚えてしまう。


「申し訳ないのですが、本日、少々、厄介な案件を抱えておりますので、しばらくお相手出来ないのをお許し下さい。
面白い本が揃っていますから、こちらで時間を潰していて下さい。」


ビルは優しさから言ってくれているのを知っているからアリスは少々顔を引きつらせながらも、精一杯いつも通りを装って答えた。

「うっ…わ、分かったわ。
お仕事頑張ってね?」

「その言葉をいただきましたし、頑張れますよ。」

にっこりと微笑んで、ビルは部屋を出て行った。

ビルが去ったのを確認してから、アリスは、はぁ、と溜め息を吐いた。

(…あたし本を読もうとすると、すぐに眠くなっちゃうんだけどな。)


適当に手近な本を手に取ってみる。
パラパラ、とめくってみてある事に気付いた。

もしや、と思って別の本を手にして、確信した。

(どの本もかなり、読み込んでいる…。)

そして、キョロキョロと本棚を見渡して一冊のお目当ての本を引っ張り出した。


数時間後、ようやく仕事を一段落させたビルが急ぎ足でアリスのいる部屋を目指していた。

(大分、時間が経ってしまいましたね。
アリスが気になります。)


勢いよく扉を開けて目にしたのは、一生懸命読書をしているアリス……ではなく、机に本を立たせたまま、突っ伏して寝ているアリスだった。

苦笑しながら、ビルはアリスの肩に手をかけて、優しく声をかけた。

「私達のアリス。どうか起きて下さい。」

ぴくり、とアリスが反応し、ゆるゆると身を起こした。

まだ夢見心地の瞳がビルを捉え、アリスは一気に目を醒ました。

「…やっ、ヤダ!あたしってば寝ちゃったの?!」

あちゃ〜と悔しそうに呟いた。

「この本は、絶対読みたかったのにな…」
ぽつり、とこぼした。

アリスが読もうとしていた本に目を留めビルが不思議そうに聞いた。

「おや。どうしてこの本を選んだのですか?
アリスの気を惹くような本だとは思えませんが。」

その言葉にアリスがみるみる真っ赤になった。

「べ、別に意味なんてないよ。…なんとなく読みたかっただけ、だよ。」

その様子に、ビルは不敵で邪悪な(アリスにはそう見えた)笑みを浮かべ、アリスに詰め寄った。


「アリス?隠し事はよくありませんね。
あくまで、言わないつもりなら…」

最後まで言い終わる前にアリスが降参した。

「言います、言いますっ!」

ビルを押し戻しながら叫んだ。

「結構な事です。」

にっこりと微笑むビルから目を反らしながら、

「この本、他の本よりも消耗しているから、ビルのお気に入りの本かなぁって思って。
…ビ、ビルが好きな本なら読んでみたいな、って…」

徐々に小さくなっていく声だったが、ビルには十分だった。

温かくなる胸を感じながら

「…では、ゆっくり食事をしながら話して差し上げますよ。
行きましょう。長い時間、一人にさせてしまってすみませんでした。」

「ううん。ビルこそ、お仕事お疲れ様!」


結局、夕御飯の時には別の話題で盛り上がってしまい、真面目な話が出来なかったのはまた別のお話†




†うわぁ…。
段々と暴走してしまって、なんでしょう、この長さはっ(*゚Д゚)
最後まで読んで下さって感謝です☆★


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