ビル†

□幸不幸★
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時折、ふと、思う瞬間がある。
アリスの命をこの手にかけようか…、と。

「…幸せに、慣れていないんですよ…」

誰に聞かせるわけでもなく、ぽつり、と番人はこぼした。


彼女を遠くから見守る事が“幸せ”だと思っていた。
いや、確かにそれも一つの“幸せ”かもしれない。

住人の誰よりもアリスの事を知っている、というのはなかなか良い気分だったから。


けれど、アリスに再び出会って言葉を交わし、文字でアリスを識るのではなく、感覚でアリスを知るにつれて生まれていく感情は。


以前に感じていた穏やかな気持ちとは、かけ離れた感情だった。

誰かの仕草や表情、言葉や声そのものにまで、自らが支配される苦悩と高揚。

しかし、紛れもなくそこに幸せを感じ取れるから。
そして、その幸せの裏に潜む恐怖をも感じ取れるから。
だからこそ時折、アリスを永遠に自分のものにしたくなるのだ。


そうしたら、恐怖は払拭されて、永遠に続く幸せが得られるような気がするから。


しかし、番人にはもう一つ分かる事がある。

そうしたら今度はとてつもない喪失感に襲われて自分も生きてはいけなくなるだろう事。


何故ならば。

「ビル?なんでこんな暗い所に座ってるの??探しちゃったよ」

扉が開き、ひょっこりと、アリスが顔を覗かせた。

アリスの姿を目にし、声を聞いた瞬間に広がるこの胸の充足感。
彼女の存在が自分にとってどれだけ大きいかを、身をもって知っているから。


「すみません。少し、考え事をしておりました」


アリスが大きく扉を開け、ビルに向かって手を差し出しながら、

「暗い所で考え事をしていると暗い考えしか浮かばないよ?ほら。あっちの部屋へ行こうよ」

満開の笑顔を向けた。
ビルはふわり、と微笑みを浮かべ

「…そうですね」

と言ってアリスの手を取った。…自分にとってのただ一つの真実を…†



*fin*
うわぁ…。
久々なので、甘いというか大人話を書くつもりが、何故か暗い話に↓ミステリー…。きっと管理人が疲れているからだと思われます↓
最後まで読んで下さって感謝です☆★


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