帽子屋†

□お茶会にはお茶菓子を★
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とてもよく晴れた日の昼下がり。


春の花々もパステルカラーや赤に黄色にと咲き誇り、若葉や新緑も目に鮮やかで。
アリスは知らず微笑んでいた。


殺風景だと思っていたこの公園だけれど、春になればこんなにも色鮮やかに彩られるものだったのだと、アリスは初めて知った。


世界は実はとても綺麗で、自分を傷付けるだけのものではなく、優しいものだというのも最近ようやく知ったのだった。


離れた所から早速呼ぶ声がした。

「遅いよっ!アリス!!」

(約束の時間まで、まだあるのになぁ。)

苦笑しながらも
「ごめんね、帽子屋。」
と、謝った。

次いで満開の笑顔で
「今日はお招きありがとう♪
はい!これ、あたしからも差し入れ。お茶しながら食べよう??」

ガチャン、と食器を取り落とす音がした。

「なっ…、べっ、別にお茶菓子なら、たくさん用意してあるに決まっているだろっ!お茶会なんだから!
バカだなアリスっ!!」

帽子の下で真っ赤になっているのを残念ながらアリスは知らない。


アリスはしゅんとして
「そっか…。そうだよね…。
あたしのケーキなんて、帽子屋の作るお菓子に比べたらお茶菓子と呼べるようなものじゃないもんね。
これは、お家でチェシャ猫と一緒に食べる事にする…。」

うっすら涙ぐみながら手に持っていた箱を、背中に隠そうとした。

がしっ!

いきなり帽子屋がアリスの腕を掴んだ。

「おっ、俺は、…ケーキが好きだっ!」

「…いいよ。無理しないで。
美味しいお茶菓子いっぱいあるんだし。」

うつむいたまま、アリスが答えた。


「いや、だからっ…、たしかにアリスの為だからお茶菓子はたくさん用意したけど…、って、…ち、違っ…!
さっきの笑顔が可愛いすぎて…って、そうじゃなくてっ!
何を言っているんだ俺はぁぁ!」

「?」

様子のおかしな帽子屋をきょとんとして見つめるアリス。

アリスを掴む腕にギュッと力が込もって、囁くような声で帽子屋が呟いた。

「…アリスの、…作った…ケ、ケーキが…食べたい…。」

アリスの頬がみるみる真っ赤になった。


「えっ、…。うっ…。
あ!い、いちようね、甘さ抑えめなチーズケーキにしてみたんだ。
口にあうと良いのだけど。」

照れ笑いしながら、アリスがいそいそと箱を差し出す。

こちらもまた、(帽子の下で見えないけれど)真っ赤になっている帽子屋がダホダボの袖で箱を大事そうに受け取った。


そして何かを吹っ切るかのような勢いで帽子屋が叫んだ。

「ああっ!15時を過ぎちゃってるじゃないか!早くお茶にするぞ!
さっさと席につく!マナーがなってないぞっ!!」

「はいっ!」

アリスも慌てて席に着いた。
そして頬の赤味を隠すように、そっと自分の頬に手を添えたのだった。


その後のお茶会は珍しく誰の邪魔も入らず穏やかな一時となった。

ちなみに持って行ったチーズケーキは殆んど帽子屋が食べてしまった。


更に家に帰ったアリスはチェシャ猫の機嫌を治すのに苦労したとかしないとか…。
それはまた別のお話†



*fin*
帽子屋はひねくれっ子で照れ屋さんが良いなぁ、と。
最後まで読んで下さって感謝です☆★


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