帽子屋†

□切札にお茶菓子を★
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何もかも初めて見るような勢いでアリスは世界の色々なものに興味を示し、その度に報告をしてくれる。


ネムリンがいて、お茶を飲む時間があればそれだけで満足だった自分には見えなかったもの。

(だけど、アリスってば馬鹿だから知らない事もたくさんなんだよなぁ。)

と口許を押さえている長い長い袖の下で帽子屋は笑みを浮かべた。

だが長い付き合いのネムリンにはバレバレだったようで

「…僕らの…アリス…の…事を考え…て…いるね」

「なっ!ち、違うよ!
ネムリンってば変な事言うなぁ!」


「…帽子屋…照れて…る」

「へぇ。帽子屋も照れる事あるんだぁ。なになに、どんな失敗しちゃったの?」

不意に背後から弾んだ声がかかった。


驚いて振り返った先には瞳をキラキラさせて“興味津々”を絵に描いたような、アリスが立っていた。

「なっ!び、びっくりさせるな!バカアリス!
しかも、盗み聞きとはマナーがなってないじゃないか。」

アリスは愛らしく肩をすくめて

「はぁい。ごめんなさい。」

と謝るも、次の瞬間には

「で、一体全体何をやらかしちゃったわけ??」


「何もやらかしてないよ!失礼だな、アリスは!」

ぷんすか言う帽子屋に、アリスは、むぅ、と膨れ

「あんな事言ってるよ、ネムリン。
ズルイよね。人の事は馬鹿だ馬鹿だ言うのに。
ここは一つ帽子屋も失敗話をするべきだと思うのっ!」

ビシッとアリスが指を差した。しかも、もう片方の手を腰にあてて。


あまりにも真剣に言うのがおかしくて、思わず帽子屋は笑ってしまった。

「ぷくく。…ホント、アリスって馬鹿だなぁ。」

口調に込められたものに気付いてアリスは顏を赤らめた。

「い…いつも、そうやってはぐらかすんだから!」

ぷいっとそっぽを向いた。

「まぁまぁ。クッキーでも食べなよ。
美味しい紅茶も入れて差し上げますよ?」


頑張ってそっぽを向いていたものの、結局、誘惑に負けてしまうアリスだった。

(アリスってば単純だからなぁ。)

長い長い袖で口許を隠しながら帽子屋は笑みを浮かべた。

たまたま起きていたネムリンだったけれど、今度は何も言わなかった†



*fin*
ネムリンはジェントルマンなのです♪
最後まで読んで下さって感謝です☆★


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