帽子屋†
□お茶会の前の一試合★
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アリスがある日真剣な顔をしながら言い出した。
「あたし、帽子屋になら腕相撲、勝てると思うの。」
帽子屋は一瞬、何を言われたか分からなかったが意味を理解した瞬間に
「はぁっ?!」
と、素っ頓狂な声をあげた。
「あたし、女王様にも勝てなかったの!
皆が、鎌を振り回りしていたからだ、って言ってたけど…。でも、帽子屋にならきっと!
だから勝負を申し込むわ!」
ビシっとアリスは指を立てた。
「アリスは失礼だなっ!…お、俺は男だっ!!」
ふん、っと胸を反らす。
「でも、帽子屋だもん。」
意味の分からない反論をするアリス。
カチン、ときたかどうかは定かではないが帽子屋が、意外にもあっさりと承諾した。
「…ふっ。…いいだろう。無知なアリスに教えてやるっ!!勝負だぁっ!」
「望むところよ!ネムリンはちゃんと起きてて審判やってね?」
言いながらアリスはネムリネズミを、チョコン、とそばに座らせて、肘の下にひくタオルを取りに行った。
その間にネムリネズミは
「帽子…屋、僕ら…の、アリスは…女の…子だから…ね」
と呟いた。
「うっ…。わ、分かってるよ!」
そう言っている間にもアリスが戻って来た。
「お待たせっ!さ♪勝負よ!」
ネムリネズミが2人の手の上にチョコン、と前足を乗せた。
「位置…について…。レ…ディー…」
言い終わる前にポテっと眠りに落ちてしまったが審判の手が離れたのを合図にして、勝負が始まった。
(…適当な所で負けてやるか。)
確かにアリスは腕力が弱かった。
さすがの帽子屋でもアリス相手では余裕があるから、チラっとアリスの様子を窺った。
真剣な表情で、やや頬を上気させながら帽子屋の腕を押し倒そうとしているアリス。
そのアリスが、押されてはなるまい、と身を若干、乗り出した瞬間、帽子屋は
「わぁっ!」
と驚きの声をあげて力を抜いてしまった。アリスの腕を上にして…。
「やったあ!あたしの勝ちだよ♪」
手を叩いて喜ぶアリス。
「バ、バカアリスっ!アリスはもう二度と腕相撲をやるなよっ!!」
帽子の下で真っ赤になりながら帽子屋が叫んだ。
「なに、そんなにムキになっているの??
大丈夫!帽子屋に勝ったからもう腕相撲はやらなくても、いいや。」
無邪気に笑うアリス。そんな彼女に帽子屋がひとつの質問をした。
「…。一つ聞く。猫やビルにやたらと腕相撲の勝負を挑まれないか??」
その言葉にアリスは驚いた声をあげた。
「すごい!なんで知ってるの??」
「!!
と、とにかく、腕相撲はやっちゃ駄目だからな!アリスは弱いんだし!」
「帽子屋よりは強いもん〜。」
腰に手をあてながら威張るアリスを見ながら
(力を入れる為に前屈みになった時に、胸元が見えるんだよっ!
無知なアリスは、危ないったらないよ!)
と声にならない叫びを叫ぶ帽子屋。
“帽子屋に勝ったから腕相撲はやらない”とアリスが宣言したのを聞いたチェシャ猫とビルが帽子屋の元に、モノ申しにやって来るのはまた別のお話†
*fin*
腕相撲は堂々と好きな人と手を握りあえる、素敵な勝負という事で(笑)
最後まで読んで下さって感謝です☆★