帽子屋†
□七夕とは★
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アリスのいた世界には、よく分からない事がたくさんある。
今日もまた―
「今日は7月7日の七夕の日なんだよ♪」
アリスがキラキラした瞳で話を始めた。
「…たなばた?」
怪訝な口調で帽子屋が問い返した。
帽子屋が知らない、と分かるとアリスは身を乗り出して説明を始めた。
帽子屋の、
「アリス、カップを置いてから話しなよ。溢したぞ。」
という言葉は綺麗に無視された。
「それがね、この日は一年に一度、愛し合っている彦星と織姫が天の川を越えて会えるっていうロマンティックな日なんだよ!」
アリスはうっとりした表情で告げた。
帽子屋はあまり感動した様子はなく、
「…一年に一度だけしか会えないのか??」
ぽつり、と呟いた。
「会いたいのに会えないのは…辛いものなのに…」
帽子屋は待っても待っても会えない辛さを知っている。
「…まだ、会える日が分かっているだけ、いいかもな…」
帽子屋は、来る日も来る日も“今日こそは!”と願う事しか出来なかった。
アリスは、はっ、と初めて会った時の事を思い出した。
うっすら涙ぐみながら、
「そうだよね…。」
と、呟いた。
ぎょっとしたのは帽子屋の方で、慌てて、
「なっ、なんでアリスが涙ぐむんだよ。
何も泣く必要ないだろ、馬鹿だなっ!」
「帽子屋の馬鹿ぁ〜」
ぐすぐすとアリスが言った。
「はっ?!なんで俺が馬鹿って言われなくちゃならないんだ…。全くアリスはわけが分からないな。」
やれやれ、といった感じに言った。
今はここに来れば必ずといっていい程に会う事が出来る。
呼べば返事をくれる。
アリスなどは、時々、頭まで叩かれる。
「帽子屋は彦星になっちゃ駄目だからね?」
「なるわけないだろっ!まったくアリスは無知なんだから。」
今のアリスには帽子屋のいつもの悪態ですら、大切に聞こえるのだった†
*fin*
もっと前に気付いていたら、全員分の七夕話を書きたかったなぁ、と後悔であります↓
ローテーションで帽子屋となりました☆
最後まで読んで下さって感謝です☆★