女王様†

□貴女が教えてくれた★
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体はいらないモノだった。

どこかに行ってしまう足がついているから。
伸ばした手を、振り払う手がついているから。
去っていく背中がついているから。


「女王様。お菓子がそろそろ焼き上がりますが、本日はどちらにお持ちしましょうか?」

ウミガメモドキがやって来て告げた。


「そうね。天気も良いからバルコニーにするわ。」

ゆったりと振り返って告げた。


そして、はた、と自らのドレスを見直してみて慌てた。

「いけないわ。
泥がはねているじゃない。着替えなくてはダメね。」

花を摘みに庭に出た際に、地面が前日の雨でぬかるんでいたのだ。


普段は気にしないが、今日ばかりはドレスに泥のシミがついたままでいるわけにはいかない。

いそいそと着替えに行く。
足取りも軽く歩きながら、自然と笑みがこぼれる。

(こうやってドキドキしながら待つというのも悪くないわ。)

そう。悪くなかった。
待つ時間はとても長く感じられるけれど、必ずあの人は来てくれるから。

あの人の為に色々と用意するのはとても楽しい一時だから。


着替えて、もといた部屋に戻ると同時にウミガメモドキが来訪を告げた。
待ち人来たれり、だ。

その言葉を聞くやいなや

「おどきなさい!」

ウミガメモドキをはね飛ばして、廊下を走り抜け、ホールへと続く階段を駆け降りる。

駆け降りながら待ち切れずに、ホールに飾られた花を眺めながら佇む人物へと声をかけた。

「アリス!!」

アリスはその声にびっくりしたように顔をあげた。

ついで、笑顔を浮かべて

「女王様、今日はお招きありがとう。」

と言い終わる前に、階段を駆け降りた勢いのままの女王にドン!と抱きつかれて危なく引っくり返りそうになった。


「アリス!
来てくれて嬉しいわ!会えてもっと嬉しいわ!!」

抱きつきながら女王はしみじみと噛み締める。

(こうして抱きつける体があるって、なんて素敵なのかしら!)


その後、苦し気な声をあげるアリスをようやく解放し、引きずるかのような勢いでアリスの手をしっかりと握ってバルコニーへと、いざなったのは言うまでもない†



*fin*
思っていた以上に長くなってしまいました↓
最後まで読んで下さって感謝です☆★


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