女王様†
□ひっそりと自己主張★
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見事な秋晴れだった。
晴れていても夏のような殺人的な暑さはなく、清々しくて風が肌に心地よい。
足取りも軽くアリスが訪れたのは女王様の開くガーデンパーティー。
緑のアーチの下に佇んでいる少女に気が付くと手を振りながら声をかけた。
「女王様こんにちは!今日はお招きどうもありがとう♪
本当に手ぶらで来てしまったけど良かったの?」
「まぁぁ!アリス!よく来て下さったわ!
勿論よ!今日はアリスの為にたくさんのお菓子を作ったんですもの」
アリスはチラリ、とウミガメモドキに目をやり、若干、疲労感の漂っている彼に会釈をした。
「さ!アリスの席はこちらですわ!」
いそいそと女王がアリスの椅子をひいた。
「お邪魔します♪」
アリスが席に着くとウミガメモドキが紅茶を注いでくれた。
女王が華奢な手でアリスの皿にクッキーやビスケットを取り分けて置いた。
「2人ともありがとう」
アリスはニコっと微笑んだ。
女王の支度が整うのを待って、
「いただきます」
ペコリ、と頭を下げた。
「クッキーもビスケットもたくさんあるから、遠慮しないでね?」
女王が愛らしく首を傾げてアリスに言った。
アリスはクッキーを1枚食べてから、ふ、と気付いた事があった。
テーブルの端っこ、最もアリスから遠い場所にある小さなそれ。
アリスはヒョイ、と席を立ち、何気なくその物を取りに行った。
そして
(ちょっと行儀悪いかな…でもいいよね)
と思い直して、その場で立ったままフォークで切り分け、パクリ、と口に入れた。
そして満面の笑みを浮かべて女王を振り返り、
「このケーキとっても美味しいよ!ありがとう、女王様」
と言った。女王は、ややかすれた声で
「…ど、どうして…わたくし…に?」
「え、だってこれは女王様が作ってくれたケーキでしょ?」
事もなげにアリスが言った。
女王は震える声で呟いた。
「…なんで…分かり、ましたの?…」
アリスはクスクス笑いながら、
「だって、ケーキはこれだけしかないのに、こんなに遠くに置いてあるんだもん。
それにあたしの好きな苺のショートケーキだもん、分かるよ♪」
ニコニコ笑いながら言った。
女王は頬を染めながら、
「ウ、ウミガメモドキの並べ方が悪いんですわ!」
と、お湯を取りに行っていていないウミガメモドキのせいにした。
(初めて作ったから美味しいか自信がなくて言えなかった、なんて言えませんわ)
アリスの為にアリスが好きだと言っていたケーキを作ったけれど。
自分が作ったと言えなくても、最も離れた場所だとしてもテーブルに置けるだけで満足だった。…少し寂しかったが。
それなのに、アリスはちゃんと気付いてくれた。
しばらくしてから紅茶を飲みながら女王様はポツリ、と呟いた。
「…分かっていたのかもしれませんわ」
アリスは首を傾げて聞き返した。
「何を?」
「アリスがアリスだという事ですわ」
そう言って、わけが分からない、といった表情のアリスに花のような笑みを向けたのだった†
*fin*
すみません↓無駄に長くなってしまった感が…(汗)
最後まで読んで下さって感謝です☆★