住人達†
□夏の残像★
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アリスは線香花火をする住人達を嬉しそうに眺めていた。
そして、ソロリ、と足を踏み出した瞬間ー
「シロウサギを悼みに行かれるのですか?」
不意に声がかかってギクリ、と足を止めた。
「...ビルは何でもお見通しなのね」
「当然でしょう?...あまり遠くへは行かないで下さいね?」
アリスは微笑みを残すと踵を返した。
アリスはお気に入りの庭園ー不思議に懐かしい感じがして好きなのだーにある椅子に腰掛けて月を眺めながら、1本だけ持って来た線香花火に火を点けた。
「心配しないでね?私は元気で楽しい毎日を過ごしているよ。
...ただ、やっぱり時折あなたに無性に会いたくなるよ」
大きな月へと、ぽつり、と呟いた。
「やっぱり、ここにいたんだね」
アリスは振り返らずに月を見上げたまま
「...やっぱり、って?」
「昔からアリスはここが好きだからね。...よくシロウサギと遊んでいたよ」
「...そっか...」
ぽつり、と囁きを落とした。
「アリス、泣いているのかい?」
やはり、にんまりしたまま尋ねる声に、ようやくアリスは振り返った。
「泣いてないよ?だって皆がいるもん。
...ただ、たまになら彼の事を偲んでもいいよね」
そう言ってアリスは泣きそうな顔で笑った。
チェシャ猫は一言
「僕らのアリス、君が望むなら」
とだけ言ってアリスの傍に寄り添った。
*fin*
美月様より『夏の名残★』の続きをリクエスト頂いたので書いてみました!...大分暗くなってしまったので、お気に召すかどうか(汗)
最後まで読んで下さって感謝です☆★