住人達†

□張り巡らせているのは★
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計画に狂いはないはずだった。
欲しかったものは全て手に入るはずだったのだ…あの日まではそう思っていた。

でもね。
僕は諦めないよ?なかった事になんてしないよ?
計画なんて、また立てればいいだけなんだからね。


「亜莉子ちゃん?…やっぱり迷惑だったかな?」

すまなそうな表情で目の前に座る少女を覗き込む。…僕の得意な表情の1つ。
案の定、少女は慌てて

「いえっ!違うんです!」

両手を振って否定した。

「…ただ?」

僕は、彼女が話しやすいように、柔らかく先を促す言葉を紡ぐ。
彼女の懸念や、しこりになりそうなものは細心の注意をもって払わなくてはいけない。
彼女は躊躇ったのちに、おずおず、と言葉を発した。

「いえ、あの…なんのお返しも出来ないのに、いつも武村さんには良くしてもらって、申し訳ないな、って…」

予想していた答えが返ってきた。
だから、用意していた“安心させる為”の笑みを浮かべた。

「亜莉子ちゃん。そんな水臭い事を言わないでいいんだよ?だって、僕たち、家族になるはず…いや、僕はもう亜莉子ちゃんを娘のように思っているんだよ。
…あ、ごめんね。勝手に娘だなんて思って、亜莉子ちゃんにとってみたら迷惑だよね」

そして切なそうに下を向いてみる。

「え!そんな迷惑だなんて…あの…、あたし嬉しいです!
あんな事があって、本当なら顔も見たくない、って言われてもおかしくないのに…武村さん、今まで通りに接してくれて、本当に嬉しく思っているんです」

そう言って彼女は、はにかんだ笑みを浮かべた。

「本当にそう思ってくれるのかい?」

「もちろんです!」

彼女は即答する。

「じゃあ、これからも、こうして会ってくれるかな?…迷惑じゃなければ」

「迷惑だなんて、とんでもないですよ!
こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

そう言ってペコリ、と頭を下げる。
彼女が下を向いている間に、思わず笑みがこぼれた。…彼女には決して見せられない笑みが。
彼女が顔をあげた時にはいつもの笑みにすり替えて

「さ?もう、そんな水臭い話はやめて、ご飯を食べよう?
亜莉子ちゃんは何にする?僕はね…」

こうやって、慎重に慎重を重ねて張り巡らせた蜘蛛の糸は、亜莉子という名をもつ、可憐で美しい蝶を絡め取る為のもの…。
それまではどれだけ空腹になろうとも耐えるよ†



*fin*
初めて書いた為に犯罪の匂いがあまりしないお話になってしまって、納得いかないのですが…。うまく表現できない自分の力量のなさに凹みます(泣)
変態な武村さんが好きなのですがねぇ。[←オイ]

最後まで読んで下さって感謝です☆★


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