住人達†
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そう、きっと彼女は“クリスマスは家族と過ごしたいので”と言うだろう。
でもね、一部の人々にとってはイブの方がロマンチックで好まれるんだよ?
「亜莉子ちゃん。今年の25日は今のご家族と一緒に過ごしたいだろうから、せめて24日は、家族になるはずだった僕と過ごしてくれないかな?
結局、誕生日を祝ってあげられなかったし…。」
突然の提案に、ちょうどデザートのパフェを食べていた彼女は驚いて顔を上げた。
「えっ?!あ、でも…武村さんだって予定とか…。
誕生日の事は、ホント気にしなくて大丈夫ですから」
と言いながら、無邪気にパタパタと目の前で手を振る。
「いや、誕生日の埋め合わせってだけではないんだ。
やっぱり、家族でイベントを過ごす、っていうのが僕の夢だったから。…でもそれは、単なる僕の我が儘かな。
ごめんね?亜莉子ちゃん。今の話は忘れて?」
そう言って、淋しげな笑みを浮かべてから、食後のコーヒーに手を伸ばした。
「武村さん!あたし24日は予定もないので武村さんさえ良ければ…クリスマスイブパーティーといきませんか?」
予想済みの答えにも、“驚いた表情”で顔をあげる。
「えっ…迷惑じゃなかったかな…?」
「とんでもありませんよ!2人だけだから盛大に、っていうのもなんですが、ケーキとか食べましょうね♪」
笑顔で言った後に彼女は“あっ”という表情になって付け足した。
「でも、武村さん甘い物、苦手でしたよね」
「いや、食べたいな」
“君を”という言葉は心の中だけで呟く。
「プレゼントも用意しますね♪何か欲しい物、ありますか?」
そう言ってどこまでも無邪気な笑みを浮かべる彼女。
「そうだね……が欲しいかな」
思わず小さく呟いてしまった言葉は、幸い彼女の耳には届かなかったらしく
「ごめんなさい。聞き取れなかったんですが、もう1回お願いします」
身を乗り出しながら聞き返してきた。
ほっ、と胸を撫で下ろしながら笑みを浮かべる。
「いや、なんでもないよ。亜莉子ちゃんがくれる物だったらなんでも嬉しいよ」
駄目押しの笑みをもう1つ。
「もう!それが一番難しいんですよ〜」
愛らしい頬を膨らませて彼女が言う。
ー今は2日の内、1日を手に入れた事で我慢してあげるよ?
最も、これで満足しているわけじゃないけどね。ー
そう思いながら、眼鏡の奥の視線を目の前で幸せそうにパフェを食べる少女に向けた†
*fin*
イベントにかこつけるというか、つけこむ感じで(笑)
最後まで読んで下さって感謝です☆★