NOVEL

□融解離脱
1ページ/1ページ

何もなくただ広いだけの真っ白なオフィスに窓からの光が射して少し眩しい。きらきらと反射するデスクを見詰めながら目を細めると彼女の肩が小さく震えた。白くて細い、この部屋と同化してしまえば良いのに。なんて思ってみるもそれは叶わぬ願いなのだろう。手を伸ばせば震え、少し遠退く彼女を部屋の隅に追いやった。ごん、と鈍い音が嫌に、大きく響いてまた私は顔を顰める。

「何故逃げる」

ひっ、と小さな悲鳴が上がる。良い気分ではないのは確かだ。白い頬に薄桃色の唇が艶かしかった。緑色のビー玉が濡れて液体が垂れ、やがては床に落ち光に反射してまたこの部屋が眩しくなる。と、同時に心臓が跳ね上がった気がした。

「質問に答えろ、何故逃げる」
「…」
「‥そんなに私が怖いか?」


床をじっと見詰めながら彼女は小さく首を横に振った後、白い右手が私の服を掴み消え入りそうな声で呟いた。彼女の頬に手をやると栗色の細い糸が甲を滑る、濡れたビー玉が私を見る。薄桃色の唇を押して弄ぶ。

「キスしたくなった」

瞬間に彼女の唇に噛み付いた、歯列をなぞり、隙間に割って入る。くぐもった声が直接脳に侵入し、甘く痺れさせた。それは眩暈を起こすのには十分な衝撃だった、考えを全て放棄してしまおうか。
少し目を開けて眼前の彼女を見るとぎゅっと目を閉じた少女な彼女が居た。全く、ただの糞餓鬼だ。萎えた私は直ぐさま彼女を突き放した。


「ふぁ‥」

突き放した彼女は無防備にも色気があった。少し開いた口からはどちらとも解らない液体が伝い、高揚した頬が大人びた少女だった。くしゃり、と栗色の髪を撫でるとくずぐったそうに彼女は笑う。そんな彼女は少女なのだろう。私もつられて口元を緩めると緑色のビー玉とぶつかった。

「サターンさん」

しかしそこから先へはまだ行けない、気付けない。手が届きそうでつい、止めてしまう私の悪い癖。怖くなって私はまた逃げ出した。





融解離脱
(放棄した考えがまた戻ってリライト)



サタちょこ何だがサターンが一回も名前を呼んでない。と言うか名前を出すのって凄く難しくて意識しないと出せないです。あ、場所はドバリシティのギンガ団ビル。オフィスで間違いはない、よね?ちょっと不安。

100321 蒼木 ゆう

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ