短編小説

□予感。
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いやな予感がしたんだ。

もう美貴に会えないって嫌な予感が。




「いつまでもいたらだめだよ?

あきらの時間は止まっちゃったんだよ。」

「……うん。

ごめん。

あまりに突然でさ。

あんまり実感がないんだよね。」

そういう俺に彼女は言う。

「なんで…なんであきらなの?

いやだよ。

これから楽しいこといっぱいあるはずだったのに。

ずっとずっと一緒にいるんだと思ってたのに。」

泣くのを我慢していた彼女の頬にはいつの間にか涙か流れていた。

彼女は俺がもうこの世にいないことを受け入れたのだ。



本当に俺も受け入れなければ。



俺の体が薄くなり始める。

その変化に彼女は気づいた。



「あき…ら?」

「美貴が泣いてくれてよかった。

俺、ほんとのほんとに……死んだんだな。」


「……うん。」

「俺さ、事故のあった日に嫌な予感がしたんだ。

美貴の身に何かあるんじゃないかって、気になってたんだけど…俺だった。」

そう自嘲気味に俺は笑った。

「…………。」

「美貴じゃなくてよかった。

……んじゃな。」

「……ばいばい。」



俺たちを嘲笑っていた雨はいつの間にかやんでいた。




 
fin.



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